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ハンセン病対策の現在とこれから I

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2013年度、AMRO(WHOアメリカ地域事務所)、EMRO(同東地中海事務所)、AFRO(同アフリカ地域事務所)、WPRO(同西太平洋事務所)のハンセン病担当者会議に参加しました。
いずれの会議でも熱心に議論されたのが、ハンセン病対策に求められる革新的なアプローチについてでした。
ハンセン病は極めて有効な治療法MDTの服用により(6か月から1年)、病気にかかった痕跡を残すことなく治癒します。1980年始めのMDT開発当時には、世界には推定1000万人以上の患者がいました。現在ではその数は約20万人。MDTの出現は、何千年と続いたハンセン病の歴史の中でエポックメイキングな出来事でした。MDTがある限り、ハンセン病対策で最も重要な事は、早期診断とMDT治療の徹底でした。その結果、これまで1600万人がハンセン病から治癒したばかりか、数百万人が障がいを起こすことなく治癒しています。
しかし、MDT開発から30年強が経ち、この間の素晴らしい成功が皮肉にも今、早期診断・治療を困難なものにしているのです。
ハンセン病の初期症状は痛くも痒くもない小さな斑紋です。初期症状が見逃しがちであることにに加え、偏見と差別から、ハンセン病とは思いたくはないので診断を避ける傾向も強く残りっています。そのため早期診断に結びつかないことがあります。
それだけではありません。患者数が大きく減少したことにより、ハンセン病に対する関心は薄れ、政府は予算を減少し、NGOは寄付集めに苦慮するようになり、診断・治療の機会の減少の結果、保健職員の診断、治療技術の低下へとつながっています。
また、現在1年間に世界で新たにハンセン病と診断される人は、約3万人に1人です。患者は広大な土地に散らばって暮らしているため、早期に患者を発見し、診断と治療に結びつけることは極めて困難なのです。
例としてあげるのならば、人口31,554人、面積約950平方キロメートル(一辺31キロメートルの正方形と同じ)の静岡県浜松市天竜区で、1年間で1人の新患者が診断される計算となります。保健職員が地域を巡回し患者発見活動をするには、言い方は良くありませんが、コストパフォーマンスの効率は極めて悪く、採用することは到底できません。
それでは、世界で毎年20万人強の新患者が障がいなく治癒できるようにするには、どうすればよいのでしょうか?今、ハンセン病対策には、MDTの出現に匹敵するようなエポックメイキング的新たな対策手法が求められています。