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【WHOハンセン病制圧大使ニュースレター127号】ハンセン病は沈黙の病気である

第78回世界保健総会にてテドロス事務局長と(2025年5月20日、スイス・ジュネーブ)

2025年5月20日から23日、スイス・ジュネーブで開催された第78回世界保健総会に出席した。今年は、日本財団および笹川保健財団がハンセン病制圧のためにWHOとの協力を開始してから50周年の節目にあたる。5月20日、私はテドロスWHO事務局長の要請により、WHO主催の公式イベントに登壇し、中国、タンザニア、カタールの保健大臣らと特別パネル・セッションに参加した。その場で、今後10年間でWHOのハンセン病対策に対し2,300万米ドルの支援を表明した。

また、総会期間中に16か国の保健大臣と面談し、ハンセン病対策の強化を要請した。その結果、各国の元首の出席の下でハンセン病対策の具体的な方策や行動計画を話し合う「全国会議」の開催が、スリランカで2025年11月、ブラジルで2026年3月に内定した。さらに、アフリカ諸国の保健大臣との間では、WHOアフリカ地域事務所およびアフリカ連合委員会の新体制の下で、ハンセン病蔓延国の保健大臣を招く「アフリカハンセン病ゼロ会議」の実現に向けて引き続き協力していくこととなった。インドネシアの保健大臣とは、7月にハンセン病の蔓延地区を共同で視察し、同国でのハンセン病制圧に向けて政府と財団が包括的に協力することで合意した。

ハンセン病は「沈黙の病気」である。その理由は三つある。第一に、初期症状に痛みや熱が出ないため、病状が静かに進行すること。第二に、聖書の時代から続く差別や偏見により、当事者が声を上げにくい状況にあること。第三に、世界各地に未だ多くの隠れた患者が存在すること。しかし、ハンセン病を「沈黙の病気」のままにしてはならない。86歳の私にとって、ハンセン病との闘いはこれからも続く。

WHOハンセン病制圧大使 笹川陽平