会長ブログ Chair's Blog

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差別と偏見・・・「沈黙は共犯だ」

その昔、『高慢と偏見 Pride and Prejudice』というジェーン・オースティンの、かなりの長編に熱中したことがありました。この本、イギリスの身分社会を背景とする結婚や家名の継続が背景ですが、今から思うと、ナイチンゲールの時代より、さらに昔の話・・・確か、最後はめでたし、めでたし風だったと記憶していますが、19世紀初頭の女性の著者、恐らく、身分や、差別偏見が当たり前だった時代の話・・・も一度読み直したいと思います。

“Black Lives Matter”「黒人の命も大切だ」という言葉が、改めて、注目されたのは去年の今頃でした。5月25日、ミネアポリスの街で、偽札使用を疑われたジョージ・フロイド氏が4人の警官に取り囲まれ、その一人に無抵抗なまま首を膝で抑え込まれて、「息が出来ない!」と訴えつつも「殺され」ました。《お勧めは出来ませんが、ほぼ一部始終の記録映像がニューヨークタイムズ紙にあります。》

差別と偏見・・・私ども笹川保健財団が主務とするハンセン病対策は、かつて主活動だった医学的公衆衛生学的対応に加えて、約20年前から、社会学的対応が重要になっています。それは、ハンセン病をめぐる世界の趨勢を歴史的に検証することと併せて、罹患した方々だけでなく、そのご家族への差別や偏見の実態を知り、その解消に鋭意力を注いでまいりました。

どんな病気であれ、誰もなりたいと思ってなる訳ではありません。ハンセン病に罹患された方々の誰もがそうであったはずです。が、発病してしまった・・・病気に罹ったこと以上に、その病気をめぐる、地域の、そして国の掟が、人々を生物学的病気以上に社会学的重病にしてしまった・・・わが国では、世界の趨勢に反して、また、国際学会の勧告もありながら、隔離が延々と継続されてしまいました。大多数の国民は、「そんなこと、知らなかった!」かもしれません。が、自分が、その立場に追いやられたら・・・という気持ちも持てなかった・・・あるいは、私どもの中に、それを是とする気持ちがあったからでしょうか。

先々週のブログのように、20年前、その国の掟は間違いだったとの裁判では原告団は勝訴されました。が、だからと云って、失われた長い年月、消えてしまったご家族との関係やあったはずのふる里の方々との交流や、ごく普通に存在したはずの暮らしのすべて・・・そしてたくさんの可能性が消えてしまった・・・などと、私ごときが書いてはいけないのかもしれませんが・・・裁判で勝訴したところで受けてこられた差別、偏見がどうなるものでもないのです。知れば知るほど、起こっていたことの深刻な実態と、それを知らなかったことに対する表現しようもない、落ち着かない気持ちに襲われます。

その中で、新型コロナウイルスに関連した新たな差別が世界中で起こりました。そのウイルスで発生するCOVID-19と命名された肺炎の患者をケアする看護師や医師の子どもへの偏見・・・何ということ!!

さらに、それから派生したのが、アメリカでのアジア系の人々への差別です。自由と民主主義の国アメリカで、次々起こる、こんな差別偏見の連鎖って、どうなっているのでしょうか。そして、中東では、パレスチナとイスラエルの武力攻撃・・・「人間は考える葦」という言葉がありますが、何を考えてきたのでしょうか!

先週、「米大統領、憎悪犯罪法に署名 アジア系への暴力増で」というニュースがありました。この中で、バイデン大統領は、こう仰っています。「沈黙は共犯だ。声を上げ、行動しなくてはならない。」と。

長らく、ほぼ単一民族的だったわが国には、アメリカのように、また、かつて難民支援に従事した頃に感じた民族や人種への、強烈な偏見が問題になることは稀でした。が、決して、異なるもに対する感情がないとか、何でもおおらかに受け入れていると云うこととは違うと思います。

今後、社会は、ますますダイバーシティ(多様性)を要するようになるでしょう。異質なものを嫌悪し、それを排除するようでは、その地域社会は発展も存続も難しくなるでしょう。何かが好きとか嫌いという感情的なものは、規則で押さえつけると、内に籠って、いっそう難しくなるでしょう。ではどうしたら良いのか?一つは、小学校時代と云った早い時期の教育というか、何らかのインプットが必要であると思いますが、それと同時に、地域社会、国全体が差別や偏見に敢然と立ち向かえる・・・言うは易く行うは難いことですが、そんな社会をつくる必要がある、と思います。

いずれにしても、もし、私が、その立場だったら・・・と考え、反省する気持ちは絶対に忘れないこと、そしてそれを身近な人々にも伝えること・・・

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