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ハンセン病問題「偏見・差別」と若者たちの取り組み

トシをとると忙しくなる理由が判りました!!

何を今頃、ほざいていると仰せですか?聞いてください。毎日、同じ仕事量をこなしているとして、です。年々身体機能が低下し気力が衰えることは、多くの高齢者が実感していましょう。その昔なら5分で出来たことが10分掛かる、そしてそれに取り掛かるのにグズグズ5分かかる・・・結果として、同じことをするのに15分、以前の3倍の時間がかかる・・・だから高齢者はトロトロしていても忙しいのです。あなたもトシをとると、必ず、絶対に、忙しくなります。

とご報告が遅れた言い訳をして、先週のお話です。

2025年2月11日、1週間前の建国記念の日に、「第24回 人権フォーラム2025 ハンセン病問題関するシンポジウム(主催:厚生労働省、法務省、文部科学省、全国人権擁護委員連合会、運営事務局:笹川保健財団)」を福岡県春日市クローバーホールで開催しました。福岡県内で12年勤務した間、何度も訪れた壮大な施設です。

さてシンポジウムは、現地とライブ配信のハイブリッド。
毎年の行事ではありますが、今回は色々なことがあって関係者の気合が一段と入りました。私も、それに煽られて、何度も広報しました。個人宛メール、フェイスブックなどなど、ご迷惑をおかけした方も多かったかと思いますが、財団スタッフもこれまでお世話になってきたご関係者に直々に広報するなどさせていただきました。

このシンポジウムはハンセン病に対する偏見・差別を解消し、ハンセン病回復者ならびにそのご家族の名誉回復を図るための、ハンセン病問題に対する正しい知識の普及啓発を行うために開催されてきました。

第1部「高校生が学び伝える、わたしたちとハンセン病問題」では、昨年度のシンポジウムを視聴してくださった学校や、探求学習のテーマとしてハンセン病問題にご関心を持ってくださった3校の高校生11名が発表してくださいました。

長い歴史がありながら、ビビッドなハンセン病問題です。それにしても世間にどれくらい知られているか・・・は昨年、厚生労働省が設置した検討会による「ハンセン病問題に係る全国的な意識調査報告書」(三菱総合研究所HPより)で明らかになったように、良く理解されているというには程遠いのです。調査報告書では、約2割の人が(罹患した人の)身体に触れることに抵抗を感じ、ほぼ同数の方が元患者の家族とご自分の家族が結婚することに抵抗を感じると答えられています。ハンセン病は医学的に治療可能なのですが、この病気をめぐる社会的な意識は依然として深刻というか、意識に上っていないことこそが問題だと思いました。これまで、ご自分が病気にかかった当事者の方々を含め、たくさんの関係者が多様な取り組みをなさってきています。が・・・調査からはその成果は乏しいといわざるを得ません。

今回のシンポジウムで発表してくださった高校生たちは、それまであまり関心がなかった、というか見聞きする機会がないままだったハンセン病に取り組まれました。高校生たちは数か月をかけて回復者やご家族に取材し、また多様な学習で得た知見をもとに発表してくださいました。

鹿児島純心女子学園の3名による発表
開智学園の4名による発表

若人が知り、感じ、考えたことを他の人に、後世に語り継いでいく・・・として3校11名の高校生の発表。それぞれの高校毎に一味もふた味異なる発表でしたが、いずれも興味深い視点がありました。はるか昔、私も高校生でしたが、この日の発表者のような柔らかな感性、深い洞察力と人間愛があったのだろうか?と反省と後悔と、そしてうらやましい気持ちをもって聞かせていただきました。そして、少し緊張しておられましたが、皆さま凛々しく輝いて見えました。ご指導の先生方には多々ご苦労もおありだったかと思いますが十分以上の成果だと確信しました。

その感想は、続いての発表でさらに巨大化しました。
第2部は、第21回、22回の過去のシンポジウムに高校生として参加した主に大学生たちが数年前のハンセン病問題の学びが、その後の自分の人生観や活動にどんな影響を及ぼしたかご自分がどう変化したかを、どれほどの時間をかけてどのように連携されたか、圧倒される見事なネット発表でした。

会場の様子

拝聴してガァーン!!とショックを受けました。

数年前には第1部で発表してくださった高校生と同じ立場だった方々です。が、全国各地の大学に散らばられていますが、どなたも真摯で思慮深いだけでなく、今どきの若者に欠けがちな社会性が充満した立派な大学生でした。お顔とパワーポイントしか拝見できませんでしたが、教育の効果成果は否定できません。このユニークなシンポジウムの効果は大・・・ハンセン病問題という課題に関与したことがきっかけで今の自分がある!と、皆さまの言葉がありました。この重要な、そして貴重な課題をもっともっときちんと扱うこと、活用すべきことを痛感しました。

今は大学生の、第21回シンポジウム発表者の経過発表

皆さまありがとう。
誤解を恐れずに申しますと、やはり1部の高校生に比し2部の大学生は発表の仕方、まとめかた、恐らく、ネットで何度も打ち合わせて下さっただろうことは感じましたが、毎日顔を見合していない、恐らく、数年前の発表時以来、それほど密な連携があったとは思えないほど、日本各地の大学に散らばっておられる中で、かつてのお仲間が連帯し熟慮してまとめた・・・なんと立派な一貫性と起承転結あるご発表、さすが大学生、中身が一段と成熟していると感心しました。

今回の高校生11名、大学生6名と大学進学が決まったという高校3年生お一人とは、いつか直々お話したいと思いました。なぜなら、最後にご挨拶された屋猛司全国ハンセン病療養所入所者協議会会長が、「私たちには後がない・・・」と仰せでした。確かに、2014年に笹川保健財団(当時 笹川記念保健協力財団)理事長として、初めて全国の国立ハンセン病療養所13か所を表敬訪問させていただいた時には、2,300名強の方が在園でしたが、2025年2月には662名に激減しています。10年の年限は在園者のお年をきっちり10才増やしました。生物学的なハンセン病は日本ではほぼコントロールされています。数年に1、2名の発病者が見つかっても、早期薬剤投与で病勢は抑えられ、治癒に向かいます。しかし、この病気に対しては、大多数のほとんどの国民が関心をもっていないか知らないまま、偏見を抱くことが続いています。

笹川保健財団は、若き日に近所のご一家が夜逃げせざるを得なかった理由が、当時はらい病とよばれていたこの病気であることを、心にとめておられた笹川良一翁と、若き日に療養所でのハンセン病者の状態をみたことから、後に薬学者としてわが国で初めてハンセン病特効薬プロミンを合成された石館守三博士の「ハンセンを病む人々を助けることは崇高な使命」とのことばが化学反応を起こし、1974(昭和49)年に設立されました。設立50周年を迎えた財団の経緯を整理していた昨年、財団開設の資金は、笹川陽平日本財団会長から提供されたことが判りました。そしてその陽平会長は、WHOハンセン病制圧大使として、世界のハンセン病対策に駆けずり回りではなく飛び回っておられます。

シンポジウム第3部では、ハンセン病家族訴訟原告団団長を務められた林力先生の講演動画が放映されました。お父上がハンセン病であったことの葛藤・・・でしょうか、先生からは直々にうかがったこともありましたが、淡々とお話される中、先生の中に燃えている何かが見えるような気もしました。2月11日当日はその林先生のお父上のご命日だそうでした。

今年101才になられる先生がご健在の間に、1部、2部で話してくださった高校生、大学生たちにさらに伝達しておかねばならないことがあると確信しました。
当日ご発表下さった皆様、ありがとう。
ご参加下さいました皆々さま、ありがとうございました。

福岡県立育徳館高等学校の発表者たちと

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「自分ごととして捉え、他者を思う心を育む——高校生がハンセン病問題を知ることの意味」ささへるジャーナル

関連イベントのご案内

昨年度、「第23回 人権フォーラム2024 ハンセン病問題関するシンポジウム」に高校生の聞き書きで参加した河野未悠さんが、ハンセン病に関する講演会の主催・進行を担われます。
河野さんは、国立療養所多磨全生園入所者の岡克之さんの聞き書きを担当し、作品を残しました。(「第23回ハンセン病問題に関するシンポジウム 高校生によるハンセン病回復者とご家族への聞き書き 作品集」PDF

シンポジウム参加後も、このようにハンセン病問題に関する啓発に積極的に関わる姿は頼もしく、私たちも期待しています。

ご興味のある方は是非ご参加ください。

講演会「3つの視点から考えるハンセン病問題」
日時:2025年2月24日(月・振替休日)10:00~11:30
場所:港区男女平等参画センター
特別講演者:
秋山肇氏(筑波大学 人文社会系助教)
ハンセン病回復者のご家族 原告番号75番
主催・進行:河野未悠