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読書の秋

9月になりました。相変わらずの猛暑でしたが、昨日から東京は台風の影響で雨模様です。2週間ほど前、私どもが長崎・五島でささかわ未来塾(8月19日ブログ参照)を開催していた時、鹿児島の西側海上で生まれた台風12号がありましたが、最近の台風は、その昔の経路と異なることが多いのに、今回の15号はオーソドックスな経路・・・南の海で生まれた熱帯低気圧が北に進む間にどんどん低気圧化して台風になりわが国を襲う・・・そして、台風一過、青空が広がり爽やかな秋となったのでしたが、今は台風も戸惑っているような・・・季節感がなくなっています。

そんな中、「読書の秋」などという言葉も死語かもしれませんが、ちょっと思いつく「〇〇の秋」です。

まずは「食欲の秋」、「味覚の秋」同様、涼しくなること以上に湿度が下がってカラっとすることで何もかも美味しく感じるのかなと思います。が、日本の場合、新米のシーズン、そして色々な果物が豊富なのが秋です。色々、問題となったおコメですが、新米はやはりおいしいです。毎年、知人から自家製の新米をおすそ分けしていただきます。「オオ!新米!!」です。独特の艶があって、ちょっともったいないとしばらく取りおきたくなるのですが、新米ですから、その瑞々しくつややかな間に賞味するべきなのでしょう。今年、しばらく野菜の値段が高騰していますが、栗、さつま芋、キノコの類、柿、梨地方によってはアケビなどなど、秋の味覚は豊富です。

「行楽の秋」もあります。各地の紅葉の知らせの前に、早くも駅やメディアでの色とりどりの木々や山々の写真やイラストに遊び心がそそられます。ついでに温泉です!

「スポーツの秋」はどうでしょうか?運動会のシーズンでもありますが、最近はあまり大々的ではないような気もします。そして私的にはほぼご縁がなくなりました。

そして「読書の秋」、「芸術の秋」や「音楽の秋」もありますが、いずれも、気温37度、毎夜のTVの気象情報でみる日本が濃い赤一色をみますと、実感しにくい「○○の秋」です。
そういえば、8月下旬、『「読書危機」に直面するデンマークが本腰を入れて講じる対策 なぜ国民は本を読むべきなのか』という記事が、「クーリエ・ジャポン(COURRiER Japon)(講談社のオンライン雑誌)」に出ていました。それによりますと、「1冊の本を読みふけることができる─これこそわれわれが若い世代に渡すべき贈り物なのです」と、デンマークの文化相がおっしゃったとあります。

この記事は、ロンドン在住で、ニューヨークタイムズに文化的な諸々を寄稿されているIsabella Kwai氏(The New York Timesより)の記事のひとつです。それのよりますと、多分、ネット文化の広がりに伴い、子どもたちが本を読まなくなっていることを危惧しているだろうと推測しますが、デンマーク政府は、書籍の価格を下げることで読書を促進する、そのために書籍にかかる25%の付加価値税免除を提案すると発表したというのです。ヤコブ・エンゲル=シュミット文化大臣は「若年層中心に『読書危機』が進んでいるので、「本の価格を下げで読書習慣を改善させたい」と述べられています。

Kwai氏によると、読書離れはデンマークだけでなく米国でも、過去20年間に大幅に進んだ、スマホやSNSの利用増加と経済的圧力が原因していると考えられているそうです。デンマークの書籍の付加価値税はヨーロッパ内では高い方で、他の北欧諸国では、すでに消費税を下げたり撤廃したりしているそうです。デンマークの新国家予算案では、書籍の税金免除に要する約3億3千万デンマーククローネ(約5,100万ドル、約76億円)は黒字予算内でまかなえるそうです。過去の調査では、デンマークの小学校4年生の約25%が「(読書力の)弱い読者」と評価されており、批判的に読んだり行間を読む力が不足していると指摘されています。

デンマーク政府はこの措置で本の値段が16~20%下がると期待しており、出版社も同程度の値下げを約束しています。4年後に効果を評価し、必要に応じて見直す計画といいます。学者や文化関係者は、読書が思考力や共感力、文化の発展に寄与するとし、税免除は学校教材や児童書のアクセス向上にも役立つと指摘しています。結論的には、デンマークは読書習慣が弱化することに危機感を持ち、書籍の税免除を通じて読書環境の改善と文化の振興を目指している・・・ということです。

「読書の秋」という言葉は、明治の文豪夏目漱石の小説『三四郎』で、中国の高名な文人韓愈(かんゆ)の「灯火親しむべし」という詩の一節を引用したことからだとされています。以下に、全文を掲げておきますが、該当の部分は、「過ごしやすい秋の夜は明かりの下で読書をするのに適している」というところです。

わが国では、1947年来、毎年10月27日から11月9日の2週間が読書週間です。そういえば、最近の通勤電車の中で、受験勉強らしき資料以外に、チラホラですが書籍を手にされている方をお見受けします。わが国の読書傾向を増えているのならうれしいです。それにしても、早く涼しくなって欲しいですね。

木之就規矩,在梓匠輪輿。 人之能為人,由腹有詩書。 詩書勤乃有,不勤腹空虛。
欲知學之力,賢愚同一初。 由其不能學,所入遂異閭。 兩家各生子,提孩巧相如。
少長聚嬉戲,不殊同隊魚。 年至十二三,頭角稍相疏; 二十漸乖張,清溝映汙渠;
三十骨骼成,乃一龍一豬。 飛黃騰踏去,不能顧蟾蜍。 為馬前卒,鞭背生蟲蛆;
一為公與相,潭潭府中居。 問之何因爾 學與不學歟。金璧雖重寶,費用難貯儲。
學問藏之身,身在則有余。 君子與小人,不系父母且。 不見公與相,起身自犁鉏。
不見三公後,寒饑出無驢。 文章豈不貴,經訓乃菑畬。 潢潦無根源,]朝滿夕已除。
人不通古今,馬牛而襟裾。 行身陷不義,況望多名譽。 時秋積雨霽,新涼入郊墟。
燈火稍可親,簡編可卷舒。 豈不旦夕念,為爾惜居諸。 恩義有相奪,作詩勸躊躇。

韓愈 『符読書城南』