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シリーズ3 在宅の仲間たち〜 「在宅看護センター 結の学校」

福島 看多機と在宅 日本財団在宅看護センター「在宅看護センター結の学校」「南東北福島訪問看護ステーション結」

事業所名: 一般財団法人  脳神経疾患研究所 看護小規模多機能型居宅介護事業所
在宅看護センター結の学校 南東北福島訪問看護ステーション結
場所: 福島県福島市南沢又字曲堀東23-2
福島駅から車で10分強の住宅地のはずれ
責任者(所長): 沼崎美津子 研修1期生
スタッフ:所長他計21名の大所帯(看護師・保健師・助産師は、非常勤2名も含め9名。スピリチュアルケア認定、ベビーマッサージ、アロマセラピスト、保母や精神保健福祉士・介護支援主任等々の資格をもつ者他、社会福祉士、作業療法士、管理栄養士、介護士・・・事務、運転手と、ウルトラ多職種です)

2014年「日本財団在宅看護センター起業家育成事業」の8カ月研修に参加時、沼崎は、「結の学校」の最大かつ最も近い連携先南東北福島病院看護部長でした。なぜ、それなりに遣り甲斐と責任もあった地位を置いて、先行き不明な仕事に挑戦したのか・・・

少子高齢化・多死社会に向けた政策は、随分以前から、論じられていました。「治す」=治療の場である病院に加え、地域の中で「治し支える」=ケアが必要との想いは、退院なさる方やご家族が抱かれるもやもやした不安を察知するたびに強くなっていました。

看護師が支えるケア、それは厳しく決められる入院の日々だけでなく、長く暮らし退院後も、死まで続くであろう「地域」「在宅」を看ること、看護ることではないか・・・退院が完全な治癒とならない事態が増え、治らないまま、徐々に下降する健康、回復が見込めない障がいを抱える人々を支えるケアの場が欲しい。そして人々の思いがかない、地域全体にホンワカした安心感があるような社会をつくることに看護師がかかわれないか、かかわるべきだと思うようになりました。

 
クリスマス会(ALS患者さん)
介護員とのレク

「結の学校」の前は葡萄畑でした。豊かに実るブドウ、その一粒一粒が豊かな房になり、それが立派な葡萄の樹になり、葡萄畑になっていたように、ひとりひとりがつながりあって家庭があり、それ連帯して邑となり、地域社会です。病院で、診療所で、クリニックでと同じように、看護師は、何処にあっても、人々の健康を支えられる存在でありたい。

私の、そして「結の学校」の夢、いえ、為さねばならないことは、地域の若い世代が安心して子供をつくり、産み、育てられる環境を、一日も早く整備することです。

「結の学校」の特徴は、最初から在宅/訪問看護センターと看護小規模多機能型居宅介護事業所を同時開業する意気込みでやってきたことにつきます。福島市は、人口約28万、2016(平26)年度に、全地域が超高齢化となりました。病を得た人々が医療施設で治療を受け、退院できたとしても待っているのは老々介護です。「結の学校」が、24時間365日、「泊り」と「通い」と「在宅/訪問看護」「訪問介護」の4つのサービスを提供しよう、せねば地域のニーズを満たせないと思った理由です。2025年問題などと、遠い先の話のように語っていた課題は、目の前でした。

全国に300余りとなった看護小規模多機能型居宅介護事業所(看多機)は、

  •  一体的かつ柔軟なサービスとして緊急時にも対応可能であり、
  •  入院の適応はないが、医療ニーズが高く在宅対応は困難な方の受け入れが可能であり、
  •  医師の指示下に、看護師が「通い」・「泊り」・「訪問看護」を適宜使い分けて医療処置が可能であり、したがって、
  •  効率的で効果的な質の良いケアが実現、できます。

「結の学校」では、看護と介護の各職員が、緊密に情報とケア方針について意見交換し、方針を共有することで、どなたにも真に必要はケアを提供できていると自負しています。

地域包括医療のコアともいえる在宅での看護と介護だけに比べ、看多機を活用することで、スタッフはより多くの時間を利用者と共有出来るが故に、心身の状態を健康と体調面のみならず、生活面や精神そしてスピリチュアルな面も把握できていると思っています。これらの包括的なケアによって、利用者の自立性が高まり、病状悪化の防止、他の健康障がいの予防も期待できそうに思っています。

少し、日常を述べてみます。
目下、看多機「結の学校」では、ケアマネージャーが登録29人のケアプランを作成します。泊りは9人まで、通いは18人までの利用者ニーズに応じ、柔軟なサービスを一元化して提供しています。自宅(在宅)でも看多機「結の学校」泊まりでも、連携している医師の往診は可能、つまり自宅では困難であっても、同じスタッフが看取ることが出来ますし、必要に応じて、医師の指示下に医療処置も可能です。介護・医療保険のどちらでも算定できるため、厚労省大臣が認める疾患および重篤な状態(ターミナル・急性増悪等の特別指示)での医療保険スライドが可能、そのような場合の介護保険は減算しますので、診療報酬(訪問看護料)算定となり、利用者の経済的負担への配慮もできます。人生の終焉を、制度にあわすのではなく、それぞれの個人のニーズにあわせたケアと看取りの経過を経験することは、スタッフのモティベーションを高めます。

さらに、制度上では、医療施設での滞在日数を短縮できるため、アッ!も少し医療介入が必要かな・・・という方を看多機が引きうければ、在宅生活に向けた退院指導とともに、ご本人やご家族の不安を軽減しつつ、在宅移行が可能、つまり病院では早期退院が、患者や家族では不安を解消しつつ在宅への準備ができるという双メリットがあります。また、このような介入が、病院と老健施設との連携をも強化できることから、利用者の安心の上に、将来の再入院と再入所を円滑化する仕組みも可能で、看多機を中心に、地域のcureとcareの効果的効率的連携が可能で、継続的看護が行えていると確信しています。

目の前に来た平成30年度診療報酬&介護報酬同時改定を踏まえ、地域包括ケアシステムは地域共生ケアシステムに変換すべきです。「結の学校」は、「医療」・「看護」・「介護」そして「福祉」の隙間を埋め、新しいケアの体制とそれを支える人材の育成に邁進します。しかし、かつてのイギリスの「ゆりかごから墓場まで」政策が破たんしたように、放漫な医療・福祉政策は破たんします。「結の学校」は、シームレスな医療・福祉体制を、民間レベルの効率的な看多機+在宅/訪問看護を行政や異業種(たとえば葬儀社)との効果的な連携の仕組みを工夫し、住民意識の変革をも含む、官民一体型の地域共生をモデルを福島市から発信したいと願っています。

実際、開業には、鉄壁のような制度に悩まされました。が、以前から務めさせて頂いてきた看護連盟役員のお陰で、実践の看護は制度を作る政治と連携することの重要性をいささかでも理解できていたこと、連盟や看護協会関連の方々のサポートも得て、さらに政治サイドからの支援も頂けたと持っています。皆さまへの感謝を込めて、今後も努力してまいります。ホームページだけでなく、ぜひ、現場にもお立ち寄りください。歓迎いたします。

文責 一般財団法人脳神経疾患研究所 看護小規模多機能型居宅介護事業所
「在宅看護センター結の学校」 南東北福島訪問看護ステーション結 責任者 沼崎美津子