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世界のハンセン病の今とこれから ~官民パートナーの協力による制圧に向けて

世界保健機関 (World Health Organization: WHO) は、世界のハンセン病対策に熱心に取り組んでいます。笹川記念保健協力財団は1974年の設立以来、日本財団と共にその活動を40年以上にわたって支援してきました。かつては世界で推定1千万人以上の患者がいたハンセン病ですが、1980年代初めに開発された治療薬(MDT)と1991年の世界保健総会での数値目標を伴う制圧決議により、官民が同じ目標に向かって努力をした結果、今日までにその数は20万人台まで減少しました。しかし、皮肉な事に、患者の減少により、社会におけるハンセン病への関心が急速に薄れてきています。関心の薄れは、対策活動をするNGOへの寄付の減少、政府や研究機関での予算削減を招き、世界のハンセン病対策を指導・監督するWHOは大きな困難に直面しています。

WHOのガイドブック 「2016-2020世界のハンセン病戦略 ~ハンセン病のない世界をめざして~」

WHOは5年毎に対策活動の評価を行い、新たな戦略を発表しています。現在の戦略「2016-2020:ハンセン病のない世界を目指して」は、患者を減らすだけでなく、ハンセン病に伴う障がい(特に子供の障がいをゼロとする)、偏見・差別を無くすと共に、各国政府の対策活動への更なる努力とNGOとの協働の強化を大きな目標としています。

一目でわかるハンセン病戦略:
自転車の前輪は病気の治癒、後輪は社会的烙印や差別のない社会の実現を表し、両輪がかみあってはじめて、ハンセン病のない世界に向かって走り出すことができる

日本財団はWHOのハンセン病対策活動に対して資金援助をしており、笹川記念保健協力財団は日本財団からの要請により、回復者を含むハンセン病の世界的専門家からなる諮問委員会を編成し、毎年WHOの活動評価を行っています。今年は、12月11-12日の2日間、インド、デリーのWHO南東アジア地域事務所で委員会を開催しました。WHOの6つの地域事務局のうち、ヨーロッパを除く5地域のハンセン病担当官と世界全体を統括するチームリーダーが出席し、現状と問題点、次年度の計画に関する議論に加え、今年は、過去10年間新患数に変化が無いという停滞を突破するための新しい対策手法に関する研究開発状況などを含む、中長期的対策活動に関する突っ込んだ議論がなされました。

民族衣装サリーを着たシン南東アジア地域事務局長(中央)の挨拶

長く、医療的な側面のみ捉えられてきたハンセン病問題ですが、その根源的な解決には、患者数を減らすだけではなく、偏見と差別の問題に取り組む必要があります。ハンセン病にかかったから、そしてハンセン病にかかった家族がいるから、何千万、何億という人々が偏見と差別の対象となってきました。差別のために社会生活が送れず、早期に診断を受けることができず、治療を完了することができないという現状を変えるためには、今後一層の努力が必要です。ハンセン病の問題は、社会と病気、病気と人生についての普遍的、かつ根源的な問いを投げかけてくれています。

南東アジア地域事務所入口。近年デリーの大気汚染はすさまじく、予防マスク姿の参加者もちらほら
二日間の会議中、お昼やコーヒータイムには事務局内の食堂で一息。豆カレーやサモサ、スイーツが美味。写真は世界一甘いと言われる「歯が溶けそう」なスイーツ、グラブジャムーン