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コロナ禍においても ハンセン病問題は置き去りにされるべきではない -世界保健機関(WHO)総会ハンセン病制圧目標決議から30年、 WHOハンセン病世界戦略 2021-2030への協力を各国に呼び掛ける-

WHOハンセン病制圧大使 笹川陽平氏(左)は、世界のハンセン病の新規症例の半分以上を占めるインドへ何度も訪問、患者を見舞う

 

笹川ハンセン病イニシアチブ(所在地:東京都港区)は、ハンセン病制圧目標を定めた1991年の世界保健機関(以下、WHO)総会決議採択から30年となる今年5月の第74回保健総会の開会にあたり、笹川陽平WHOハンセン病制圧大使(2001年より在職、日本財団 会長、所在地:東京都港区)とともに、ハンセン病ゼロの実現のために、世界的なコロナウイルスの流行下にあっても、ハンセン病への対策を絶やさないことを各国の保健関係者に訴えます。

 

1991年の第44回WHO総会の決議では、2000年までに世界レベルで、公衆衛生上の問題としてのハンセン病の制圧(人口比1万人あたりの登録患者数を1人未満にすること)が採択され、各国の努力により、この目標は2000年末に達成されました。さらに現在では、ほぼすべての国でもこの制圧基準が達成されています。

 

しかしながら、ハンセン病は決して過去の病気ではありません。WHOによると世界には毎年約20万人の新規患者が報告されており、世界各地にハンセン病の蔓延する“ホットスポット”と呼ばれる局地的な高蔓延地区が点在しています。また、障害を抱えたハンセン病回復者は世界中に約300万から400万人存在するといわれており、ハンセン病の患者・回復者やその家族らに対する差別や偏見も根強く残っています。

 

2021年4月、WHOより『ハンセン病世界戦略2021-2030年』が発表され、ハンセン病制圧は新たな局面を迎えました。目標には2030年までに120カ国でハンセン病患者のゼロを達成、および世界の新規診断患者数の70%を減少することが含まれています。2001年のハンセン病制圧大使就任以来、蔓延国を中心に100カ国以上を訪れた笹川大使は、この戦略によってハンセン病問題のない世界の実現に向けた取り組みを加速できることを期待すると述べる一方で、「この野心的な目標を達成するためには、各国政府からのコミットメントが必要だ。各国がコロナ対策に追われる現状は十分理解しているが、ハンセン病問題が放置されるようなことがあってはならない」と述べています。

 

また、笹川氏は、コロナウイルス蔓延により、世界的に貧困層ほどより大きな打撃を受けており、ハンセン病に罹患したことによりすでに社会的、経済的に打撃を受けているハンセン病患者・回復者やその家族らに、コロナ禍がさらに追い打ちをかけている状況であることを指摘し、ハンセン病の社会面の問題への取り組みが重要であることを強調します。

 

「ハンセン病問題を根本的に解決するためには、病気を治療すると同時に差別を解消することが不可欠であり、2010年に国連総会で採択された『ハンセン病差別撤廃決議』が各国で適切に実施されることが鍵になる」と笹川氏は語ります。

 

制圧大使として、また日本財団の会長として、ハンセン病対策に半世紀以上携わってきた笹川大使は、次のように述べています。「ハンセン病制圧に関するWHO総会決議から30年という節目となる今年は、ハンセン病制圧のために集結した関係者が、再び志をひとつにするのにふさわしい年です。新たな『ハンセン病世界戦略2021-2030年』を武器に、何千年もの間人類の共通の敵であったこの病気との闘いに終止符を打つために、再び力を合わせようではありませんか。」

 

ハンセン病について

ハンセン病は、らい菌が主に皮膚や神経を侵す慢性の感染症です。未だ世界では年間20万人余りの新規患者数が報告されています。治療法が確立された現代では完治する病気ですが、治療の開始が遅れたり、治療を中断したりすると、抹消神経が障害を受け、手足・顔面の知覚麻痺や筋力低下などの身体的な障害につながることがあります。また、ハンセン病は完治する病気にも関わらず、多くの回復者およびその家族が、ハンセン病に対する社会の根強い差別や偏見に今なお苦しんでいます。

 

笹川ハンセン病イニシアチブについて

笹川ハンセン病イニシアチブは、笹川保健財団および日本財団と笹川陽平WHOハンセン病制圧大使がハンセン病のない世界の実現を目指す戦略的アライアンスです。笹川陽平WHOハンセン病制圧大使および笹川陽平が会長を務める日本財団(1962年設立)と、ハンセン病対策に特化した財団として設立された笹川保健財団(1974年設立)は、45年以上にわたり世界各地でハンセン病対策に取り組んでいます。

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