JP / EN

News 新着情報

第一期 COVID-19ハンセン病コミュニティ支援活動報告:ナイジェリア

笹川保健財団は、助成事業を通じてハンセン病への偏見・差別がなく、病に罹患した人が必要な治療やサービスを享受でき、ハンセン病が問題とならない社会の実現に向けて取り組んでいます。2020年はコロナ蔓延の一年となり、ハンセン病の患者・回復者やその家族らの生活はより厳しいものとなりました。そのため助成事業も、既存の支援に加えコロナ禍でのハンセン病コミュニティを支援するため、①直接的ニーズへの対応、②政府に対するアドボカシー、③積極的な情報発信を組み合わせた包括的な事業を実施しました。第三弾は、ナイジェリアからのレポートをお届けします。

ナイジェリア 第1期 COVID-19ハンセン病コミュニティ支援活動報告③

ナイジェリアは、アフリカ大陸西岸部に位置しています。2億人を超えるアフリカ最大の人口を有すことから、しばしば「アフリカの巨人」と称されることもあります。ナイジェリアは、2000年に国レベルでのハンセン病の制圧(人口1万人あたりの患者数が1名未満)を達成しましたが、その後も毎年3,000~4,000名の新規患者が確認されています。また、ハンセン病患者、回復者およびその家族に対する偏見・差別が根強いことから、医療面と社会面における継続的な取り組みが必要です。

今回の支援先は、ナイジェリアでハンセン病患者・回復者のために活動しているPurple Hope Initiative Nigeria(以下、PHIN)と、PHINと連携して活動を実施するNGO団体GERMAN LEPROSY AND TUBERCULOSIS RELIEF ASSOCIATION Nigeria(以下、GLRA)です。PHINは、2018年10月に設立された回復者団体で、南部12州のハンセン病コロニーを中心に、より脆弱な立場にある女性や子どものハンセン病患者・回復者への支援に力をいれています。長年ハンセン病問題に取り組んでいるGLRAとは、啓発活動やハンセン病回復者へのトレーニングにおいて協業の実績があり、今回の2020年11月から4か月及ぶ支援活動も連携して行われました。活動拠点となったナイジェリア南部は、主要都市を中心に新型コロナウィルスの感染が周辺地域に拡大し、移動制限をはじめとする様々な規制が行われ、ハンセン病の患者・回復者、その家族は生計の手段を失うなど日々の生活に深刻な影響が及びました。

当事者の直接的ニーズへの対応

PHINは、ナイジェリア南部の12州のハンセン病患者や、回復者の住むコロニーのリーダーと連絡を取り、そのなかでもとりわけ生活が厳しい100世帯に米、豆、植物油などの食料パッケージやマスクや石鹸といった衛生用品を届けました。日々の仕事を失い生活に困窮していた回復者にとってこれらの支援は大きな希望となりました。

食料・衛生用品を配布、新型コロナ感染対策をはじめとした衛生教育を実施(ナイジェリア、エヌグ州 Oji River 2020年12月)

また、コロニーに住むハンセン病回復者に、新型コロナウイルスに関する情報が届いていなかったため、各コロニーに住む回復者リーダーと定期的に情報交換を行い、各コロニーで行われる集会を通じて情報を周知する体制を整えました。時にはPHINのスタッフがコロニーに赴いて、正しい手の洗い方など予防対策のための講習会を開催しました。また、経済的な困窮の影響は、女性や子どもたちにも広がっており、コロナ禍で失業した女性のハンセン病回復者5名に対し小規模ビジネスを再開するための経済的支援をしました。さらに30名の子どもたちには学校に通い続けることができるように学用品の支給も行いました。

継続的に正規教育を受けられるように、回復者の子供たちに本や筆記用具を配布 (ナイジェリア ラゴス州 オコババ 2021年2月13日)

積極的な情報発信

PHINは、Facebookを使って写真や動画も積極的に配信しました。また、ラジオによる啓発活動も行いました。差別や偏見は根強く残っていますが、ハンセン病回復者2名が勇気をもってハンセン病問題や病気の正しい情報を自分たちの声で配信しました。リスナーからは、「ハンセン病について初めて知った」などのコメントや質問が多く寄せられました。

ラジオによる啓発活動 (ナイジェリア、エヌグ州 2021年2月)

PHINによって届けられた支援は、多くの患者や回復者に希望をもたらしました。今後も続くと予想されるコロナ禍を皆で力を合わせて乗り越えていけるよう、彼らの更なる活躍に期待しています。

Purple Hope Initiative Facebook