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ダライラマ・笹川奨学金事業〜2020年度活動報告⑤

世界で最もハンセン病の患者が多いインドは、患者、回復者、その家族に対する差別や偏見が厳しい国です。治療法が確立する以前の時代には、ハンセン病に罹患した人々はコミュニティから追放されたため、自分たちの集落(コロニー)を形成し、定着するようになりました。現在インド全国には約750のコロニーが存在すると言われていますが、社会的・経済的に困難な立場に置かれている人が多く存在します。中でもコロニーの人々にとって高等教育を受ける機会は限られており、進学を諦め、安定した収入を得られる職業に就くことができない若者が大勢います。

ダライラマ・笹川奨学金事業は2014年にダライラマ14世がWHOハンセン病制圧大使である笹川陽平日本財団会長と共にデリー郊外のハンセン病コロニーを訪問し、コロニーの若者を対象とする奨学金プログラムに自身の印税を提供したいと提案され、日本財団も助成金を提供することで、マッチングファンドとしてスタートしました。笹川インドハンセン病財団(以下、SILF)が事務局となり、回復者組織・APALや蔓延州のリーダーの協力を得ながら事業を実施しています。本事業は2020年4月に日本財団から笹川保健財団に移管されました。

ダライラマ14世(左)と笹川陽平WHOハンセン病制圧大使

毎年、9の蔓延州(デリー、マハラシュトラ州、ウッタル・プラデッシュ州、マディア・プラデッシュ州、西ベンガル州、ビハール州、ジャルカンド州、オリッサ州、チャティスガール州)のコロニーから25人の若者を選定し、給付型奨学金を支給します。6期目にあたる2020年度は、173人から応募を受け付け、書類選考と面接を実施して25人を選定しました。ほとんどの奨学生は生まれ育ったコロニーを出て、自宅から遠く離れた大学の寮や下宿先で生活することになります。環境が変わり、ホームシックになったため、学業に身が入らず中途退学してしまう奨学生がこれまで数名いました。そこで、SILFは今年1月に6期生を対象としたワークショップをオンラインで開催し、奨学生同士が交流する場を設けました。また、事務局として定期的に奨学生と連絡を取り、問題があれば相談に乗ったり、励ましたりしながら卒業までサポートしています。

これまで124人の若者が奨学金を得て進学し、そのうち21人がエンジニア、教員、看護師、フライトアテンダントなどの職を得ました。彼らは安定した収入を得ながら、着実にそれぞれのキャリアを積んでいます。今後も毎年、コロニー出身の若者が数名ずつ社会に羽ばたいていきます。彼らが教育を受け、社会でキャリアを積むことにより、自身や家族の生活を守り、貧困の連鎖を断ち切ってもらいたいと願っています。また、夢の実現に向かって努力している奨学生たちが、コロニーの子どもたちにとってのロールモデルとなることを期待しています。

ダライラマ・笹川奨学金事業 第6期奨学生①
ダライラマ・笹川奨学金事業 第6期奨学生②