JP / EN

News 新着情報

ポルトガル ロビスコ・パイス療養所における歴史保存活動支援 (第二フェーズ)〜2020年度活動報告④

ロビスコ・パイスは、ポルトガルの歴史上、唯一の国立ハンセン病療養所です。1947年に、ハンセン病の予防と治療、研究を目的として設立されました。1996年、患者数の減少から、ハンセン病療養所としては公式に閉鎖し、国のハンセン病基幹病院としての機能を維持しつつ、セントロ地方の医療リハビリセンター(CMRRC-RP: Centro de Medicina de Reabilitação da Região Centro – Rovisco Pais)へと転身しました。ロビスコ・パイスは、144ヘクタールの敷地に、18の建物や美しい庭、農作地、小さな沼に囲まれた5つの家族病棟がありました。これまでに3,000人以上のハンセン病の入院患者と、何千人もの外来患者の診断治療を担ってきましたが、2021年現在では高齢になる2名の入所者が暮らしているのみです。

ロビスコ・パイスの風景

ロビスコ・パイスには、ポルトガルでハンセン病関係史料を最も多く保存しているアーカイブがあり、入所事務関連史料や病理学史料、細胞学史料、社会系史料などが残されている他、旧療養所棟やチャペルなどの歴史的建造物、入所者が使っていた日用品、家具、医療機器等の貴重な歴史的遺品も残されていました。財団では、ロビスコ・パイスからの要請を受け2017年より歴史保存活動の支援をしています。

2017年からの2年間は、第一フェーズとして文書史料の保存処置と目録作成の活動支援を行いました。写真資料は、写真共有プラットフォーム・Flickr – Hospital Colónia Rovisco Paisにて公開しました。

2019年からの3年間は第二フェーズとして、歴史的遺品の保存処置とそれらをチャペルで展示し、ミュージアムを開設すること、ロビスコ・パイスの歴史を伝えるパネル制作を行い、それを用いて巡回展示会を開催すること、また、ポルトガルの歴史に関するウェブサイトを構築することの3つの活動を行っています。

2020年度は、第二フェーズの2年目にあたり、上記の3つの活動を着実に進めることができました。

(1)ミュージアム開設

ロビスコ・パイスの敷地にある多くの建物から遺すべき遺品400点を選考し、洗浄・保存処置が行われ、目録作成を行いました。また、臨床、社会活動、レクレーション、宗教活動、科学研究、コミュニティ活動の6つのテーマの下で展示パネルを制作しました。

開設準備中の展示された遺品①
開設準備中の展示された遺品②

最終的に、かつてチャペルとして使用された建物に、これらの遺品やパネルを展示して、ミュージアム開設をめざしています。

ミュージアムを開設するチャペル外観
ミュージアムを開設するチャペル

(2)巡回展示会の開催

コロナ流行のために当初予定していた開催地では、展示会が延期やキャンセルとなり、スケジュールの再調整が必要になりましたが、下記の3カ所で開催することができました。  

最初にロビスコ・パイスの外来棟にて展示され、診療に訪れる人々が見学しました。開催からの1カ月間で約250名の方が見学し、展示内容を書籍として発行してもらいたいとのリクエストを受けるなど、好評を博しています。この巡回展示パネルは、各地の教育機関や文化施設、医療機関などでの開催も可能とするために、ウェブサイトFacebookなどを通じて、貸出受付や案内を発信しています。

ロビスコ・パイスでの展示の様子①
ロビスコ・パイスでの展示の様子②

(3)歴史ウェブサイト制作

ウェブサイト・Hansen Storiesでは、当事者や医療従事者等の証言を中心として公開しつつ、ポルトガルにおけるハンセン病の歴史に関する包括的な情報を発信しています。現在までに24名の証言を公開しています。

チャペルでのミュージアム開設や移動展示会開催については、コロナの影響を受けつつも着実に歩を進め、ロビスコ・パイス療養所の歴史に関する証言や遺品を保存し、ポルトガルにおけるハンセン病の歴史を再構成することができました。2021年の第二フェーズ最終年は、ウェブサイトのさらなる充実や、巡回展示会の開催などコミュニティの人々と共にその歴史を保存継承する活動を計画しています。