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第一期COVID-19ハンセン病コミュニティ支援活動報告:ブラジル・アマゾナス州、セアラ州、バイア州、リオデジャネイロ州

笹川保健財団は、助成事業を通じてハンセン病への偏見・差別がなく、病に罹患した人が必要な治療やサービスを享受でき、ハンセン病が問題とならない社会の実現に向けて取り組んでいます。2020年はコロナ蔓延の一年となり、ハンセン病の患者・回復者やその家族らの生活はより厳しいものとなりました。そのため助成事業も、既存の支援に加えコロナ禍でのハンセン病コミュニティを支援するため、①直接的ニーズへの対応、②政府に対するアドボカシー、③積極的な情報発信を組み合わせた包括的な事業を実施しました。今回は、その第四弾として、ブラジルからのレポートをお届けします。

ブラジル 第1期 COVID-19ハンセン病コミュニティ支援活動報告④

南米大陸で最大の面積と人口をもつブラジルは、WHOの定める公衆衛生上の問題としてのハンセン病制圧(人口1万人あたりの患者数が1人未満)を達成していない国の一つです。毎年約25,000人の患者が発見され、その多くは中西部や北東部などの経済的に貧しく、医療のアクセスが悪い地域に集中しています。またブラジルは新型コロナウイルスの累計患者数が2000万人と他の国と比べても桁外れに多く、市民の暮らしは困難となりました。中でも経済的に脆弱で、社会から孤立しがちなハンセン病回復者の生活は大変厳しいものとなりました。このような背景で支援活動が実施されました。

今回の支援活動地域はアマゾナス州、セアラ州、バイア州、リオデジャネイロ州の4カ所で、事業期間は2020年11月~2021年2月までの4カ月間です。活動は全国回復者組織であるMORHANの支部が地域の状況とニーズを反映した内容をそれぞれ計画し、ナショナルMORHANの支援を受けながら実施しました。MORHANは1981年に設立された全国規模の回復者組織で、現在約2400人のハンセン病回復者とその家族また、学生や医療・保健従事者などがボランティアとして活躍しています。

活動期間中、ブラジル全国ではコロナ患者が急増中の状態でした。ボランティアの移動により感染を広げてしまう恐れがあったため、彼らはナショナルMORHANが事前に作成した安全のプロトコルを十分理解し、活動に際してマスクやフェイスシールドの着用、手指の消毒など感染予防の徹底に努めることが求められました。

北西部に位置するアマゾナス州では、州都マナウスにて回復者294世帯に食料品と衛生用品を支給し、さらにコロナ禍で孤立しがちな家庭を訪問して精神的なケアを行いました。また、自治体と協力して、自家用車を持っていない高齢の回復者をワクチン接種会場まで送迎するなど、様々な活動を組み合わせて回復者の生活改善と感染予防に取り組みました。

食料品と衛生用品をバンに詰めて配達中(2021年2月アマゾナス州マナウス)
高齢の回復者のワクチン接種をサポート(2021年2月 アマゾナス州マナウス)

北東部のセアラ州では回復者80世帯を訪問し、食料品と衛生用品を支給しました。また、2021年1月末の「世界ハンセン病の日」に、地元のNGOと協力して啓発キャンペーンとして音楽パフォーマンスを行い、街頭でコロナ予防のフライヤーを配布し、感染予防を広く市民に訴えました。

同じく北東部に位置するバイア州では回復者の中でも最も脆弱な立場に置かれているシングルマザー20人に食料品と衛生用品を支給しました。また、障害予防のケアが必要な80人の回復者にセルフケア・トレーニングを実施し、ケアに必要な衛生用品のキットを支給しました。

南東部に位置するリオデジャネイロ州では旧療養所地区で生活する回復者60世帯に食料品と子供の玩具を支給しました。また、マリカという先住民居住区では、住民を集めてハンセン病やコロナ予防のレクチャーを行い、アルコールジェルを支給した他、孤立しがちな回復者の家庭をソーシャルワーカーが訪問してカウンセリングを行いました。中には新型コロナウイルスにより家族や友人を失った回復者もいて、彼らの喪失感を癒すために何度も訪問することもあったそうです。

コロナ予防のフライヤーを住民に配布する(2020年12月 リオデジャネイロ州先住民居住区(マリカ))
回復者家族に玩具を支給(2020年12月リオデジャネイロ州旧療養所地区(Hospital Estadual Tavares de Macedo))

ブラジルでは多くの医療機関が急増する患者に対応できず、病床の逼迫や医療器具の不足という事態が発生しました。また経済活動の停止によって生活手段を失った人も多く、今日明日の食料にも困るような状況が続きました。このような状況の中で回復者の生活と健康を守る本事業は非常に意義深いものだったと言えます。特にコロナ禍で親しい人に会えず、孤立し、絶望しがちな回復者にとって話し相手となるボランティアの存在は大きな支えとなりました。

未だにコロナ収束の見通しは立っておらず当面は厳しい状況が続くことが予想されます。今後もMORHANや各支部が、その発信力やボランティアの動員力を生かして資金を集め、必要な人へのケアを継続することを願っています。