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第一期COVID-19ハンセン病コミュニティ支援活動報告:インド(SKSS)

笹川保健財団は、助成事業を通じてハンセン病への偏見・差別がなく、病に罹患した人が必要な治療やサービスを享受でき、ハンセン病が問題とならない社会の実現に向けて取り組んでいます。2020年はコロナ蔓延の一年となり、ハンセン病の患者・回復者やその家族らの生活はより厳しいものとなりました。そのため助成事業も、既存の支援に加えコロナ禍でのハンセン病コミュニティを支援するため、①直接的ニーズへの対応、②政府に対するアドボカシー、③積極的な情報発信を組み合わせた包括的な事業を実施しました。今回は、その第六弾として、インドからのレポートをお届けします。

インド(SKSS) 第一期 COVID-19ハンセン病コミュニティ支援活動報告⑥

インドは2005年にハンセン病の制圧を達成したとはいえ、毎年約12万人の患者が発見されるハンセン病の蔓延国です。また、ハンセン病当事者やその家族に対する差別や偏見は厳しく、未だに100を超える国レベルでのハンセン病に対する差別的な法律が存在します。

インドはアジアで最も新型コロナウイルスが流行している国です。この支援事業への申請がなされた第1波の時は、1日の感染者は8万人を超え、厳しいロックダウンは市民生活に大きな影響を及ぼしました。中でも社会的・経済的に脆弱なハンセン病コミュニティでは多くの人が生計手段を失い、生活が困難になりました。また、厳しい移動制限や病院がコロナ対策を優先したことで後遺症等の治療を必要とするハンセン病患者・回復者が医療機関でケアを受けることが難しくなり、彼らの生活の質が大きく低下することが懸念されていました。

このような状況の中、インド中西部のマハラシュットラ州で2020年11月から翌年2月までの4カ月間、「COVID-19ハンセン病コミュニティ支援」が実施されました。支援先団体はSaksham Kushtanty Swabhimani Sanstha(以下、SKSS)で、2019年に同州のChandrapur地区とGadchiroli地区のハンセン病回復者団体として設立されたNGOです。「ハンセン病が恐れられることがないインクルーシブな社会」の実現を目指し、啓発活動、当事者へのカウンセリング、アドボカシー活動などさまざまな活動を実施してきました。また、今回SKSSの活動をサポートするALERT INDIAは40年以上もマハラシュットラ州の都市や農村で生活するハンセン病回復者の社会的な問題解決を目指して活動するNGOです。

この支援事業では最初に20人のハンセン病回復者ボランティアを選び、緊急支援の受益者を決定するために地域住民の基本的な情報やコロナ禍での被害状況を調査しました。その結果、14人に生計を立て直すための現金(INR5,000~11,000)を、50人に食料品や日用品を購入するための現金(INR1,500)を支援金として支給しました。生計向上の支援を受けた14人は既存または新規の仕事に支援金を投資し、少額ながら利益を上げてコロナ禍でも生活ができるようになりました。

さらに後遺症のケアを必要とする回復者がセルフケアを家庭で実践することを目指した「セルフケア・プロモーション・キャンプ」を実施しました。事業期間中、ボランティアが回復者に教材を使いデモンストレーションをするなどセルフケアの正しい方法を教えて回りました。その結果、潰瘍が進行していた122人のハンセン病回復者のうち、57人に改善の傾向がみられました。

セルフケア・プロモーション・キャンプ(2020年12月)

この支援事業は回復者団体と支援団体が綿密な活動計画を立て、実行することでスムーズに実施され、具体的な成果を得ることができました。インドではデルタ株の出現により今年3月頃から第2波が到来したため、患者が爆発的に増え、人々の生活は再び困難となりました。そのため、財団では第2期支援事業として回復者団体と支援団体の活動を改めて支援しました。5月上旬をピークに陽性者が減りつつありますが、現在でも1日4万人近くの陽性者が出ており、完全に収束するにはまだ時間がかかりそうです。このような状況の中、この支援事業で中心的な役割を果たした回復者ボランティアが今後も活躍することが期待されます。