笹川ハンセン病イニシアチブ（所在地：東京都港区）が、2019年度より建設費を支援しているエチオピアハンセン病回復者協会（以下、ENAPAL）の新本部ビルが完成しました。2022年9月2日（金）に、エチオピアの首都、アディスアベバにて開所式が行われました。ビルは、エチオピア政府から寄付された土地に建つ5階建てです。

開所式には、エチオピアのエルゴゲ・テスファイエ女性・社会問題大臣、リア・タデッセ保健大臣、笹川陽平WHOハンセン病制圧大使などが出席し、エチオピアのハンセン病制圧に向けた取り組みが紹介されました。今回、エチオピア政府より閣僚2名が出席したことは、エチオピア国内でのこのプロジェクトの重要性を示すこととなりました。

エチオピアは、2020年に2,500人を超えるハンセン病患者が新たに発見され、WHOがハンセン病対策優先国と指定している23カ国のひとつです。ENAPALは1996年に設立され、エチオピアのハンセン病患者・回復者およびその家族の社会参画と機会均等を実現するために活動している、2万人以上の会員を擁する地域密着型の組織です。

今回のプロジェクトは、ENAPALが、2011年頃にエチオピア政府に新本部用地の提供の打診をしたことに端を発し、2017年に、1,500平方メートルの土地を無償で譲り受けることができました。これはエチオピア国内のNGOとして初めての事例となりました。

その後、2018年7月にエチオピアを訪問した笹川陽平WHOハンセン病制圧大使は、ENAPALからプロジェクトの支援依頼を受け、笹川保健財団が慎重に調査した結果、2019年より建設費の支援をすることとなりました。

ENAPALは、完成したビルを、将来的には、協会本部として使用する予定ですが、まずは教育機関に校舎として賃貸し、安定した収入源を確保する考えです。これまでENAPALの活動は、笹川保健財団をはじめとするハンセン病制圧の分野で活動する国際NGOの支援によって支えられてきました。しかし、今回の新本部ビルの完成により、賃貸収入で資金基盤を安定させることで、持続的かつ独立して活動できる組織を目指すことが可能となりました。それは、長い間社会から疎外されてきたハンセン病患者、回復者やその家族にとって尊厳と希望の象徴となりました。さらに、このビジネスモデルは、他国のハンセン病制圧活動団体の活動モデルとなることとして期待されます。

式典の前日には、笹川ハンセン病イニシアチブが2021年に開始した、コロナ禍でもハンセン病問題を見過ごしてはいけないというメッセージを発信するキャンペーン「Don’t Forget Leprosy」をテーマにシンポジウムが開催され、政府関係者やNGO、ハンセン病回復者関係者が参加しました。