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2023年度ハンセン病対策助成活動報告:バングラデシュの教育支援

笹川保健財団は、助成事業を通じてハンセン病への偏見・差別がなく、病に罹患した人が必要な治療やサービスを享受でき、ハンセン病が問題とならない社会の実現に向けて取り組んでいます。2023年度もハンセン病問題に取り組む内外の多彩な団体と連携し、様々な活動を支援しました。

今回は、その中よりバングラデシュの教育支援活動について支援先のALO Societyプログラムオフィサーのクリントンさんからのレポートをご紹介します。

バングラデシュにおける教育支援を通じてハンセン病当事者のコミュニティに力を与える

ハンセン病当事者団体 ALO Society プロジェクトオフィサー
クリントン・マラカーさん

Advancing Leprosy and Disadvantaged Peoples Opportunities Society:ハンセン病と恵まれない人々の機会を促進する会(ALO Society)は、2013年にバングラデシュで設立された、ハンセン病当事者・障害者・社会的弱者等による全国レベルのNGOです。すべての人が自分の権利を理解し、質の高いケアを受け、生活向上の機会を得ることができる「すべての人のための社会」の実現を目指して活動しています。

バングラデシュの教育制度は、初等教育、中等教育、高等教育の三つの段階に分かれています。教育制度全体の質とアクセスを向上させる努力が続けられていますが、中途退学率が依然として高いことが大きな課題です。2022年のバングラデシュ国勢調査およびバングラデシュ教育情報統計局(BANBEIS)のデータによれば、初等教育の中退率は13.95%、中等教育では37.6%に達しています。この高い中退率の背景には、貧困、農村部における学校へのアクセスの悪さ、特に女子の教育を阻む社会規範、そしてハンセン病への偏見・差別があり、これらが複合的に影響しています。

このような背景をもつ複雑な社会経済状況においては、的を絞った介入が極めて重要です。ALO Societyは、2023年10月より半年間、笹川保健財団の支援とハンセン病ミッションインターナショナル・バングラデシュの協力を得て、ハンセン病当事者とそのコミュニティのエンパワメントを目的とする教育支援プロジェクトを行いました。貧困とハンセン病によるスティグマによって社会から疎外された人々に、学校教育以外の場で学習する機会を提供し、自己開発や経済的自立のために不可欠なライフスキルの習得や教育の質のギャップを埋めることを目指した「エンパワメントのための教育プロジェクト」です。

このプロジェクトは、バングラデシュの4つの行政区にある7県で実施されました。大学生100人(男性37人、女性63人)がチューターとして、498人の小中高生へのベンガル語、英語、数学、理科、社会などの学業支援と、学校に通ったことのないまま大人になった210人のハンセン病患者・回復者とその家族や団体メンバーに読み書きや計算等の指導を行いました。チューターの学生もまた、ハンセン病患者・回復者の家族または団体のメンバーで、社会経済的に恵まれない背景を持つ学生で構成されており、チューターとして働くことで、高等教育機関での学業継続のための少額支援を毎月受けることができます。さらに、チューターと学習者には学習を円滑に進めるための教材も提供されました。他にも、教育指導法やハンセン病の簡易診断法に関する研修が提供され、学生たちがその知識を学び広めることができるようにしています。このように、教育を受ける側も、与える側も個人の能力を向上させ、貧困とスティグマの連鎖を断ち切ることを目指して、プロジェクトが進められました。

国の教育法の変更への対応や、治安状況が憂慮される中、プロジェクトは着実に進められ、半年間という短い期間ではあったものの、ハンセン病コミュニティ内の教育のレベルは向上し、コミュニティへの参加者も増加するという大きな成果を上げました。コミュニティ内の教育に関する考え方も変わりつつあります。今後もこのプロジェクトを継続し、コミュニティへの関与を深め、教育支援システムを強化し、持続可能な変化を提唱することによって、より広い地域に影響を広げて行くことを目指します。

このプロジェクトは、教育が周縁化されたコミュニティを向上させる力を持っていることを示しており、また、ALO Societyが持続的な変化をもたらすためにコミュニティ支援に取り組んでいる姿勢を体現しています。

「ダラガウ・ハンセン病・障害者開発イニシアチブ」の夕方セッションで、大人の学習者たちと、彼らに教えるチューターの学生(2024年1月19日、シレット、ホビゴンジ)