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2023年度ハンセン病対策事業報告:ブラジル当事者団体MORHANの政府へのアドボカシー

ブラジル当事者団体 MORHANは1981年の設立以来、ブラジルにおけるハンセン病問題の解決を目指して、偏見・差別、人権、歴史保存への取り組みを中心として幅広い活動を展開してきました。笹川保健財団の支援によりこの10年で47の支部が開設され、現在68の支部で、2,910名のボランティアが各地で活動を行っています。特に政府へのアドボカシー活動や啓発活動ではブラジルで唯一無二の存在で、保健省が設置する保健審議会のメンバーとして政策提言を行う等、大きな影響力を有しています。

2023年11月には、MORHANによる長年の政府へのアドボカシー活動が実を結び、ハンセン病を理由に強制隔離された患者や、引き離された子供達に対する補償を生涯年金の形で支給する法律14736号が公布されました。ブラジルのルーラ・ダ・シルバ大統領は、これを「ブラジル国家の過ちに対する歴史的賠償」と称しました。大統領が出席しブラジリアで行われた署名式には、全国からMORHANのメンバー550名が駆け付け、勝利を祝いました。

賠償法承認の署名を掲げるブラジルのルーラ・ダシルバ大統領(中央)とニシア・トリンダーデ保健大臣(中央右)とMORHANの代表者ら(2023年11月24日)

この法律は、2007年に制定された法律11520号を拡張するもので、当時はハンセン病居住区の病院で隔離されていた人々にのみ終身年金が支給されていましたが、新しい「賠償法」では、自宅やアマゾンのジャングルで隔離されていた人々や、親と引き離された子どもたちも対象に追加されました。

MORHANは、法律14736号の署名を単なる法的な達成ではなく、歴史の過ちに対する謝罪と償いを示す重要なステップと見なしています。この法律は、過去の痛ましい歴史に向き合い、真実と正義を追求し、より包括的な未来を目指す国家のコミットメントを示していると考えています。

昨年までMORHANの代表を務めたアルトゥール氏は次のように述べています。「この法律は、より共感的で平等な社会に向けた最初の一歩であり、MORHANのような当事者団体が人権のために戦い続ける励みとなることを願っています。今後も病気や偏見、また新しい治療法や技術の導入に際して多くの困難があるでしょう。進展を遂げる中で、隔離施設等は過去の痛みを思い出させる負の遺産として保存し、人類が同じ過ちを繰り返さないようにする必要があります。」