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2023年度ハンセン病対策事業報告:ハンセン博士によるらい菌発見150周年記念イベントの開催

2023年は、ノルウェーのゲルハール・アルマウェル・ハンセン博士によってらい菌が発見されてから150周年という、ハンセン病の歴史にとって節目の年でした。ハンセン博士によるらい菌の発見は、人類史上初めて病原体を特定した画期的な出来事でした。この発見は医療分野において大きな進歩をもたらしましたが、現在でも年間約20万人の新規患者が報告されており、らい菌発見以前に呪いや神の罰と考えられていたハンセン病への偏見や差別は、現在も世界中で根強く残っています。笹川ハンセン病イニシアチブでは、らい菌発見150周年を啓発活動の好機ととらえ、ハンセン病問題への関心を喚起するため、さまざまな記念イベントを開催しました。

ハンセン博士によるらい菌発見150周年記念イベント(於:ノルウェー、ベルゲン、2023年2月28日)

ハンセン博士がハンセン病患者の検体から棒状の細菌を検出したと初めてノートに記した日が1873年2月28日でした。最初の記念イベントは、ちょうどその150年後にあたる2023年2月28日に、ハンセン博士の出身地であるノルウェー・ベルゲン市で、ベルゲン大学との共催により実施されました。イベントでは、エンゴ市長、ハンセン病当事者、ハンセン博士のひ孫のパトリックス氏らをスピーカーとして迎え、ハンセン病の過去の振り返り、現状の分析、今後の取り組み等について議論されました。
 
続いて、2023年6月21日、22日に「ベルゲンハンセン病国際会議」を、ベルゲン大学と共催しました。直前の6月6日と13日には、この会議をより一層充実したものにするため、基調講演者を招いた事前ウェビナーも開催しました。本会議では、医療、社会、歴史保存の専門家や研究者、NGO関係者、ハンセン病当事者団体代表等約200人が集まり、医療、人権と尊厳、歴史保存の3つのテーマでセッションを行いました。会議の開会式では、テドロス・アダノムWHO事務局長がビデオメッセージを寄せ、「らい菌が発見され150年、WHOが発足して75年が経ち、ハンセン病との闘いは多くの進歩を遂げてきたが、『ハンセン病ゼロ―疾病ゼロ、障害ゼロ、差別ゼロ―』という共通の目標に向けて、まだ多くの課題が残されている」と述べ、「コロナの大流行により崩壊した医療システムの正常化には、さらなる努力が必要だ」と語りました。開催期間中、会議場にて学術セッションと、ハンセン病当事者団体による活動の好事例紹介セッションからなるポスター展示も行われました。

ハンセン博士によるらい菌発見150周年記念イベント(於:ノルウェー、ベルゲン、2023年2月28日)
ハンセン病当事者団体の活動の好事例紹介ポスター展示の前で参加者と笹川陽平WHOハンセン病制圧大使(於:ノルウェー、ベルゲン、2023年6月21日、22日)

150周年記念イベントの締めくくりとして、2023年10月24日から26日にかけて「アルマウェル・ハンセン国際映画祭」をベルゲンで開催しました。この映画祭は、ベルゲン大学、ベルゲンハンセン病ミュージアムの協力を得てベルゲン国際映画祭と共催したもので、ハンセン病をテーマにした世界初の国際映画祭となりました。ハンセン病の歴史、偏見と差別、そしてハンセン病との闘いをテーマにした、4本の長編映画と2本の短編映画が上映されました。また、ベルゲンのハンセン病ミュージアムでの上映や、学校向けのプログラムも行われました。

一連のイベントを通して、多くの関係者と連携することができ、ハンセン病に関する正しい情報を広め、当事者に対する偏見や差別を払拭するうえで、貴重な機会となりました。