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【WHOハンセン病制圧大使ニュースレター124号】変革の担い手としてのハンセン病当事者

WHOハンセン病制圧大使の笹川陽平氏は、ダライ・ラマ-笹川奨学金の受給者と面会。2024年11月20日、インド、ニューデリー

去る11月19~23日にインドを訪問した。周知のとおり、インドはハンセン病の最大蔓延国であり、私は過去に60回以上インドを訪れ、ほぼすべての州を回り、医療面と社会面の双方からハンセン病問題の解決に努力してきた。手前味噌であるが、おそらく私はデリーに在住するインド人よりも、インドを見ていると言っても過言ではない。

今回の訪問では、インド保健家族福祉大臣やWHO南東アジア事務局長らと面談したが、特に印象に残ったのは、「ダライ・ラマ笹川奨学金」事業の10周年記念式典に参加し、多くの奨学生と交流できたことである。同奨学金は、ダライ・ラマ14世が自身の著作による印税と、日本財団の資金を原資として設立された事業で、ササカワインドハンセン病財団(S-ILF)が実施主体となり、インド国内に約750あるハンセン病コロニーに居住する若者が高等教育を受けるための奨学金を給付している。それにつけても知人から、本来は人々が寺や僧侶に寄付するもので、笹川さんのように僧侶から寄付を受けるのは珍しいと言われたこともある。ダライ・ラマ師は私と共にコロニーを訪問・激励されたこともあり、殊の外ハンセン病患者・回復者とその家族の社会復帰に強い愛情をお持ちである。奨学生は多くが卒業後に安定した職業に就き、中には家族を引き取りコロニーから町に移住するといった事例も聞くことが出来た。

一方で、コロニーに居住する若者の数を考えれば、奨学生の数はまだ十分ではない。よって、今後も継続してこの事業を実施していく必要性を強く感じた。また、今回事業の成果を報告するために、ダラムサラを訪問し、ダライ・ラマ14世に久しぶりに会う予定であったが、急な予定が入ったため、直前にキャンセルせざるを得なかった。近い将来、あらためてご報告の機会を得たいものである。

WHOハンセン病制圧大使 笹川陽平