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【プレスリリース】ハンセン病当事者の声が世界を動かす―第3回グローバル・フォーラムがインドネシア・バリで開催

笹川ハンセン病イニシアチブ(イニシアチブ)は、2025年7月4日から6日にかけて、第3回世界ハンセン病当事者団体会議/グローバル・フォーラムをインドネシア・バリで開催しました。当事者の声を中心に据えたこの国際会議には、21か国から110名を超える当事者団体の代表が参加し、世界保健機関(WHO)、国連特別報告者、支援NGO、国際ハンセン病学会(ILA)など、多くの関係者が集いました。

第3回世界ハンセン病当事者団体会議/グローバル・フォーラム集合写真。世界26カ国から180人が参加。中央は笹川陽平WHOハンセン病制圧大使(於:インドネシア・バリ、2025年7月6日)

本フォーラムは、第22回国際ハンセン病学会(ILC)の直前に開催され、その成果を国際社会に向けて発信することを目的としました。マニラ(2019年)、ハイデラバード(2022年)に続く第3回となる今回は、国連ハンセン病差別撤廃特別報告者を務めたアリス・クルス博士(現:本イニシアチブ人権アドバイザー)のリーダーシップのもと、1年をかけて当事者と共に準備が進められました。ピープル・センタード・アプローチ(人を中心に据えた手法)を採用し、当事者による調査、地域別のオンライン会合、ニーズ調査などを通じて、プログラム自体が当事者の声や優先課題を反映する形で設計されました。

笹川保健財団の南里隆宏理事長は開会挨拶で次のように述べました。「皆さんの背後には、ここに来たくても来られなかった多くの仲間がいます。声を上げられない人々の思いを背負っていることを、どうか忘れないでください。大切なのは、参加することそのものではなく、その機会をどう具体的な行動につなげるかです。このフォーラムの価値は、皆さん一人ひとりにかかっています。」

本フォーラムでは、以下の3つの成果物が発表されました。

  1. 1. コミットメントレター:強靭な組織づくりと多層的な行動を誓う文書
  2. 2. 関係者への提言書:政府、保健医療機関、教育機関、企業、メディア、開発関係者などに対し、当事者の権利と尊厳の尊重を求める内容
  3. 3. 団体の能力強化計画:多方面のネットワーク強化、持続可能な資金確保、リーダーシップ育成、データやツールへのアクセス向上などを盛り込んだ計画

最終日には、WHO、国連、NGOなどの関係者と当事者によるラウンドテーブルが行われ、3つの成果物へのフィードバックと支援が表明されました。これは本フォーラムでの議論を実現可能な行動につなげるための重要な一歩です。

笹川陽平・WHOハンセン病制圧大使は、参加者に向けて次のようにメッセージを送りました。「困難な状況の中で立ち上がり、組織を立ち上げ、仲間のために活動してくださっている皆さんに、心から感謝します。私は、できる限りのサポートをしていきたいと思います。WHOが掲げる2030年までのハンセン病ゼロに向けた活動目標達成には、皆さんの力が不可欠です。」

7月7日からは19の当事者団体が、ILCの会場で自身のニーズ調査をもとに作成したポスター発表を行っています。これらは地域に根ざした課題や優先事項を可視化するものであり、国際学術の場において貴重な視点を共有する場となっています。

また、同日の開会式では、アル・カドリ氏(インドネシア・PerMaTa)とエバレスタス・リリベス・ヌワカエゴ氏(ナイジェリア・Purple Hope Initiative)が登壇し、フォーラムの3つ成果物を紹介。学会に集まった各国の関係者に対し、当事者の声と優先課題を直接伝える機会となりました。

ハンセン病について

ハンセン病は、皮膚や末梢神経を主に侵す感染症であり、世界では、現在も毎年約20万人(子どもを含む)の新規患者が報告されています。多剤併用療法(MDT)によって治癒が可能ですが、診断と治療が遅れると後遺障害を残すことがあります。医学的には治る病気であるにもかかわらず、誤解や偏見が根強く残っており、治癒した人やその家族も教育・就労・社会参加の面で差別を受けることがあります。笹川ハンセン病イニシアチブは、各国の対策強化と当事者のエンパワメントを通じて、「病気」と「差別」の両方のない世界の実現を目指しています。

笹川ハンセン病イニシアチブについて

笹川ハンセン病イニシアチブは、笹川陽平WHOハンセン病制圧大使と笹川保健財団および日本財団がハンセン病のない世界の実現を目指す戦略的アライアンスです。「医療面」では、1975年以降、WHOを通じて世界各国政府によるハンセン病対策を支援しており、その累計は約2億ドルにのぼります。また、「社会面」については、日本政府などと連携し、国連総会における「ハンセン病患者・回復者・その家族らに対する差別撤廃決議」の採択(2010年)や、国連人権理事会を通じた国連ハンセン病差別撤廃特別報告者の設置(2017年)に大きく貢献しています。さらに、ハンセン病当事者をハンセン病問題解決の重要なアクターであるとし、1990年代以降、22か国で37のハンセン病当事者団体を支援してきました。