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【WHOハンセン病制圧大使ニュースレター129号】ダライ・ラマ14世との再会

ダライ・ラマ14世と面会(2025年11月28日、インド)

2025年11月28日、ダライ・ラマ14世と面会した。これまでにも幾度となく謁見の機会をいただいてきたが、今回は実に11年ぶりの再会であった。かつては、デリーのハンセン病コロニーを法王とともに訪問したことがあり、その折、私が「インドに約750存在すると言われるすべてのハンセン病コロニーから物乞いをゼロにしたい」という強い思いを申し上げたところ、法王はこれに深く賛同されただけでなく、ご自身の著書の印税の一部をご寄付くださった。世界広しといえども、教会や僧侶に寄進されることがあっても、その逆は稀ですので、私の少ない自慢話の一つです。

このご厚意を礎として、コロニーに居住するハンセン病回復者の子弟が高等教育を受けるための奨学金制度「ダライラマ・笹川奨学金」事業が2015年に発足した。同事業により支援を受けた奨学生は現在までに約260名にのぼり、彼らの多くが社会の中核を担う若い力として歩み始めている。法王の慈愛あるご支援が、確かな未来を切り開く力となっていることは疑いない。

今回の面会にあたり、法王が米国で手術を受けられたと伺っていたため、ご体調を案じていた。しかし、拝謁すると、以前と変わらぬ慈愛に満ちたお姿でおられた。法王はすでに90歳のご高齢であることから、かつてのような活発な議論を交わすことは叶わなかったものの、長年の交流を収めた懐かしい写真を幾枚か持参し、それらを手に取りながら、温かく穏やかな雰囲気の中で旧交を温めることができた。法王の柔和なお人柄は少しも変わらず、チベット仏教ではダライ・ラマ14世は観音菩薩の化身といわれている。そのお方が、私の髭を引っ張りながら写真のように頭を寄せてこられた。老妾の嫌がる髭は突如、聖なる髭となった。例は悪いが、かつて世界的女優であったエリザベス・テイラーにされたキスと菩薩に髭を引っ張られた感触は私の生涯忘れられない思い出となった。

ご年齢を考えると、この再会は私にとってかけがえのない時間となり、「世界からハンセン病をなくす」という使命にこれからも全力で取り組む決意を、あらためて深く心に刻む機会となった。

WHOハンセン病制圧大使 笹川陽平