ハンセン病と人権・各団体の取り組み Hansen's Disease and Human Rights

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ハンセン病と人権

2003年日本財団は、国連人権高等弁務官事務所を通じ、ハンセン病をめぐる差別問題の解決に向けた働きかけを開始しました。この働きかけは、2010年12月の国連総会本会議において、加盟192カ国(当時)の全会一致により、「ハンセン病の患者・回復者とその家族への差別撤廃決議※1」と「原則及びガイドライン※2」の採択につながりました。日本財団はその後も、「原則及びガイドライン」が各国レベルで適切に実施されるよう働きかけを継続しました。その結果、2017年11月に、各国における「原則及びガイドライン」の実施状況や偏見・差別にかかわる調査を行う特別報告者(Special Rapporteur)が任命されました。


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「ハンセン病差別撤廃決議」の主な内容
(1)ハンセン病差別問題は重大な人権侵害問題と各国が認識すること。
(2)各国政府がハンセン病に関する差別を根絶する措置をとることを要請。
(3)国連人権高等弁務官事務所によるハンセン病差別問題に関する人権教育・啓発活動を要請。
(4)国連人権高等弁務官事務所に各国のハンセン病差別問題に関する取り組みを調査し、情報を収集することを要請。
(5)人権理事会諮問委員会に2009年9月までにハンセン病差別を終わらせるためのガイドラインの作成を委託。

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ハンセン病差別撤廃を目的とする原則・ガイドライン(P&G)の概要
(1)原則(Principles)
ハンセン病患者・回復者等は、人権・基本的自由の権利を有し、尊厳のある人間として扱われるべき
(2)ガイドライン(Guidelines)
各国政府は、ハンセン病を理由とする差別なしに、人権・基本的自由の完全な実現を促進、保護、保障するべき
各国政府は、すべての者が法の下に平等であることを認識するべき
各国政府は、ハンセン病患者・回復者の女性、子供その他の脆弱なグループの人権の促進・保護に関して、特別な配慮を払うべき
各国政府は、可能であれば、過去のハンセン病患者に関する政策や慣習の結果として離ればなれになった家族の再統一を支援するべき
各国政府は、ハンセン病患者・回復者とその家族が、他のすべての者と同様に、コミュニティへの十分な参加を享受する権利の普及を促進するべき
各国政府は、職業訓練の機会等を促し、支援するべき
各国政府は、教育への等しいアクセスの普及を促進するべき
各国政府は、ハンセン病患者に無料又は手頃なヘルスケアの質及び基準を提供するべき
各国政府は、適切な住居水準についての権利を認識し、その保護・促進のための適切な措置を取るべき
各国政府は、啓発及びハンセン病患者・回復者の権利と尊厳への関心を高めるための方針と行動計画を策定するべき

出典外務省HP ハンセン病差別解消にむけて国際社会における日本政府の取り組み
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hansen/index.html

回復者・当事者主催の確立に向けて

各地で誕生したハンセン病回復の組織

ハンセン病が治る病気となった現在も、世界各地でハンセン病の患者・回復者およびその家族らが根強い偏見と差別の対象となっている例は少なくありません。特定の病院や療養所でのみハンセン病の治療が可能であった時代、あるいは隔離政策の結果として、多くの患者たちが家族や故郷を離れ、治療を求めて各地から集まり、病院や療養所の周辺に定着しました。それらはやがてコロニーや定着村と呼ばれるようになり、今日に至るまで世界各地に残っています。そこで暮らす人々の中には障がいを持つ人も多く、一部の例外を除き、今なお偏見や差別に苦しんでいます。

一方、ハンセン病の医療サービスは長く他の一般医療サービスとは区別され、特別の部門で閉鎖的に提供されてきた例も少なくありません。社会のハンセン病への認識は、疾病管理政策、隔離政策、慈善、宗教、報道、社会各層の無知や無関心を含むさまざまな要因が組み合わさって作られたものであり、患者は長い間慈善・治療・研究などの対象という受け身の存在でした。

このような中でも、自らの存在、生き方を他人に決められるのではなく、自ら声をあげていこうという取り組みが始まりました。1951年に設立された日本の全国国立癩(らい)療養所患者協議会(現 全国ハンセン病療養所入所者協議会:全療協)や、1946年に設立されたマレーシアのスンゲイ・ブロー療養所委員会、1981年に設立されたブラジルのハンセン病回復者社会復帰運動団体モーハン(MORHAN)は、自らの尊厳と権利を求めて、早くから積極的な活動を行ってきた団体の一例です。

こうした動きは、国際的な回復者ネットワークであるアイディア(IDEA:共生・尊厳・経済向上のための国際ネットワーク)が1994年に設立されたことをきっかけに、世界各地に広がっていきました。現在では中国の広東省漢達康福協会(HANDA)、エチオピアの全エチオピア回復者協会(ENAPAL)、韓国のハンビ協会(HANVIT)、インドネシアのペルマータ(PerMaTa)、フィリピンのハンセン病回復者と支援者ネットワーク(CLAP)、コロンビアのコルソハンセン(Corsohansen)、インドのハンセン病回復者協会(APAL 旧ナショナル・フォーラム)などが、貧困からの脱却、機会平等の拡充、障がい治療へのアクセス確保、尊厳の回復を目指し、積極的な活動を展開するようになりました。

ハンセン病対策の担い手として

このような当事者主導の動きに呼応するように、近年ハンセン病対策全般に、患者・回復者・その家族らの参画を重視する動きが生まれています。例えば、2006年12月に国連総会で採択された国連・障がい者権利条約の中で、「障がいをもつ人々は、彼ら・彼女らに直接関係するものも含め、政策やプログラムの意思決定に積極的に関わる機会を持つべきである」ことが明確に述べられています。さらに2009年以降、ハンセン病対策をより効果的に展開していくためには、当事者主体的の参画が欠かせないという認識がハンセン病専門家・NGO・当事者組織らの間で浸透していきました。そして、従来から強調されてきた、社会啓発や人権問題に限らず、患者発見、治療、障がい予防、教育、権利の確保など、ハンセン病対策のあらゆる過程で回復者の役割を強化する「回復者参加型ハンセン病対策」への取り組みが始まりました。

In 2010, the WHO hosted a meeting in Manila on strengthening the participation of persons affected by leprosy in leprosy services, leading to the publication of guidelines the following year.
2010年マニラで開催された回復者の役割強化についてのWHO会議には、各国の回復者の参加があった。

その結果を受けてWHOは、2011年に「ハンセン病サービスへの当事者参加を強化するためのガイドライン」を作成しました。このガイドラインの作成には回復者が主体的に関わり、啓発、カウンセリング、研修、能力強化、障がい予防、リハビリテーションから、プログラムの計画と運営、資源活用、調査研究、評価に至るまで、ハンセン病サービス全般において、回復者の積極的な参画を推奨する内容となっています。

ハンセン病対策の担い手として
世界保健機関『ハンセン病サービスにおける回復者の役割強化ガイドライン』
ハンセン病対策の担い手として
2011年9月にインド・ハイデラバードで開催された全国ハンセン病コロニー代表者集会にて発言する、ナルサッパ氏(現インドハンセン病回復者組織APAL会長)写真提供:日本財団

世界でハンセン病問題に取り組む団体

長い歴史を持つハンセン病問題には、昔から数多くの団体が関わり独自の活動を展開してきました。1980年代初めに推定1200万人とも言われた患者が、30年後の2012年に22万人強まで減少した背景には、ハンセン病問題を世界レベルで見据え、「公衆衛生上の問題としてのハンセン病の制圧」という共通の目標の下に、一致団結して活動を展開してきた組織・団体の存在がありました。

公益財団法人 日本財団(The Nippon Foundation)

公益財団法人 日本財団(The Nippon Foundation)
2009年1月、国連主催「ハンセン病差別撤廃に関する国際会議」で発言する日本財団 笹川陽平会長。写真提供:日本財団

1962年に創設された日本財団には、初代会長であった笹川良一氏の世界からハンセン病で苦しむ人をなくしたいという強い思いが今日まで受け継がれています。日本財団は1975年以降、現在に至るまで一貫してWHOハンセン病プログラムを支援しています。中でも、総額50億円の資金供与を行い、1995年から1999年の5年間、WHOを通じて全世界の患者にMDTの無償配布を実現したことは、世界のハンセン病対策を大きく前進させました。その結果、2000年末には全世界レベルで、さらに2005年には6か国(ブラジル、モザンビーク、コンゴ民主共和国、ネパール、マダガスカル、タンザニア)を除く全ての国で人口1万人あたり患者1人未満という目標が達成され、2019年現在、未達成の国はブラジル1国を残すのみになっています。2000年以降、MDT無償供与は製薬会社ノバルティスの公益部門ノバルティス財団に引き継がれ、今日に至っています。
日本財団笹川陽平氏は、2001年5月から今日までWHOハンセン病制圧大使を務めており、草の根レベルの活動視察、各国の指導者への働きかけ、メディアを通じた広報・啓発を積極的に行い、隔月で発行されるニュースレターを通じてその詳細を世界に発信しています。日本財団の活動は医療面にとどまらず、患者・回復者の人権問題や社会啓発の分野においても大きな役割を果たしています。中でも2006年以降、毎年「世界ハンセン病の日」にあわせて、偏見・差別をなくすことを世界に向けて発信する啓発イベントである「グローバル・アピール」はその代表例といえます。

世界保健機関(WHO)

Guidelines for the diagnosis, treatment and prevention of leprosy.
2010年マニラで開催された回復者の役割強化についてのWHO会議には、各国の回復者の参加があった。 http://nlep.nic.in/pdf/WHO%20Guidelines%20for%20leprosy.pdf

WHOは1970年代以降、ハンセン病の効果的な治療法であるMDTの開発をリードし、1982年WHOハンセン病化学療法研究委員会は、MDTを世界の標準治療法とする勧告を出しました。MDTの出現は、1991年の第44回世界保健総会における「公衆衛生上の問題としてのハンセン病の制圧」決議へつながりました。公衆衛生上の問題としてのハンセン病の制圧の目安として、人口1万人あたりの患者数が1人未満と定義したのも、WHOの専門家グループです。この数値基準は世界共通の明確な目標として、その後の制圧活動の展開にあたり、関係者の意志の統一と意欲の強化・維持に大きく貢献しました。
WHOはハンセン病対策プログラムの円滑かつ効果的な実施のため、専門家グループを編成し毎年活動内容を科学的に評価・検証するとともに、5年ごとにハンセン病対策にかかわる世界戦略を策定し、各国保健省に対し技術的指導や助言を行っています。
2015年に公表された2016年~2020年の5年戦略では、1)ハンセン病により深刻な障がいを持つ患者(G2D)の割合を人口比100万人あたり1人未満にする、2)ハンセン病による障がいを持つ子どもの新規患者数をゼロにする、3)ハンセン病に関する差別法を持つ国の数をゼロにする、の3つの目標を掲げています。またWHOは、2018年6月には「ハンセン病の診断・治療・予防に関するガイドライン」を策定しました。

国際ハンセン病団体連合(ILEP)

ハンセン病関連の活動をしている世界各地のNGOが効果的に連携するため、1966年に設立されました。各団体の活動の重複を防ぎ、限られた資源をより有効に活用するため、ILEP加盟団体が活動する国にはILEPコーディネーターが置かれ、その国の保健省やWHOと協力しながら活動の調整を行っています。
2019年現在、ILEPには笹川保健財団を含む13団体が加盟しています。ILEP加盟団体の活動は、医療従事者に対する技術支援やトレーニング、患者の発見・診断・治療・リハビリテーション、新治療法の開発、差別とスティグマに関する調査など、その活動内容は多岐にわたっています。

ハンセン病団体連合(ILEP)加盟団体
  • American Leprosy Missions(アメリカ)
  • Associazione Italian Amici di Raoul Follereau(イタリア)
  • DAHW (German Leprosy and Tuberculosis Relief Association)(ドイツ)
  • Damien Foundation Belgium(ベルギー)
  • effect:hope(カナダ)
  • FAIRMED(スイス)
  • Fondation Raoul Follereau(フランス)
  • Fontilles(スペイン)
  • Lepra(イギリス)
  • Leprosy Relief Canada(カナダ)
  • Netherlands Leprosy Relief(オランダ)
  • Sasakawa Health Foundation(日本)
  • The Leprosy Mission International(イギリス)
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