JP / EN

Chair's Blog 会長ブログ ネコの目

猫イメージ

2023年度の公開講座―「認知症」と「緩和ケア」

昨夜2024年1月25日は、財団恒例の公開講座でした。数年間の新型コロナパンデミックで感染症関係が多かったのですが、今年度は二つの主題でした。
前期は「認知症と在宅看護」で、福岡市の医療法人すずらん会たろうクリニック院長内田直樹先生と北里大学医学部精神科学講師/相模原市認知症疾患医療センターセンター長大石智先生にご講演いただきました。認知症はもはや珍しくはなく、不謹慎な言い方ですが、ありふれた病気になっています。お二人の講師から、その医学的病態とともに、それを病む人々との対話、対応対処を5回にわたりお話頂きました。

後期は「在宅看護と緩和ケア」。1月18日と昨夜25日、1回の講義時間を長くして2回に分けて講演をして下さったのは在宅ホスピス研究所パリアン(代表)、森の診療所の川越厚先生です。

先生は、関東圏の病院での産科婦人科医としてのご勤務や院長職をもご経験なさいましたが、早い時期から緩和ケアを実践されてこられました。2000年には、東京のダウンタウンで在宅ホスピス研究所を開設され、在宅医として主にがん患者の在宅緩和ケアを実践し、指導し、また、広めてこられました。そして、2021年9月からは、ご活動の拠点を山梨県北杜市に移されています。

先週、今週の公開講座では、これまでの緩和ケア医としてのご活躍の間、先生が関与された何人かの経過、ご本人とご家族のお気持ち・・・本人も家族も迷う、悩む、苦しむ・・・そしてそれぞれがそれらと向き合い、消化し超越される経過を冷静な科学者としての目でご覧になりながらも、厳しい事態をどのように超えてゆけるか、ゆくべきかの道案内的な、とても人間的な対応を解説下さいました。魂に触れるガイド・・・簡単な言葉、対処でも、それは病者やその家族の心に食い入る何かがある、医師と病者・・・と家族の魂の交流交差のありようと拝察しました。緩和ケアの重要な要素spiritual(霊的な・・・精神的なとは異なる)は、病者側の問題であると同時に、ケアにあたるものが理解し修得しておくべきものー技術ではありませんーだと思いました。

病院という治療の場が必須なことは申すまでもありませんが、個々人の状況によっては、在宅という、治療者にとってはアウェー的診療と生活の場でのケアも、適切であって欲しいと願っている・・・それは笹川保健財団が行っている「日本財団在宅看護センター」ネットワークの目指すものでもあります。

「Sasakawa看護フェロー」でアメリカ、カナダのトップ大学院への留学を目指す仲間数人も対面参加しました。日夜、在宅看護に明け暮れる現場看護のベテラン、看護・・・人間を看(み)・護(まも)る人道的学問の探求と発展を目指して留学を目指す若い新鋭たちとの意見交換、大いに刺激を受けました、お互いに。

財団ビルを出て、振り返ると、満月に近いお月様・・・宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げて、先週1月20日に月面に着いたという小型月着陸実証機「SLIM」、太陽電池が切れて、月面でどうしているのかしら・・・ふと思いました。

財団事務所の近隣からみえた満月