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ハンセン病回復者団体の真の自立を目指して〜2020年度活動報告②

アフリカ大陸の東部に位置するエチオピアは、2000年に人口1万人当たりの患者数を一人未満にするという国レベルでのハンセン病の制圧を達成しました。しかしながら、その後も毎年3,000~4,000名の新規患者が確認されており、ハンセン病患者、回復者およびその家族に対する偏見・差別も根強く残っています。これからも継続して医療、社会の両面からハンセン病問題に取り組む必要があります。

エチオピアのハンセン病問題の解決に向けて中心的な役割を果たしているのが、エチオピアハンセン病回復者協会(ENAPAL)です。1996年に設立されたENAPALは、全国に20,000人以上のメンバーを有し、様々なパートナー団体と協力して活動を展開しています。笹川保健財団は、2001年よりENAPALへの支援を開始しました。

自立の要となる本部ビル建設プロジェクト

現在、2019年度から始まったENAPALの新本部ビル建設を支援しています。このプロジェクトは2017年にENAPALが政府より無償で土地を譲りうけたことに端を発し、様々な技術的調査を経て施工がはじまりました。2020年度は、世界的に猛威を振るう新型コロナウイルス感染拡大のため、エチオピアにおいても移動や集会の制限など感染対策が取られてきました。刻一刻と状況がかわるなかで、臨機応変に対応し、政府のルールに則り、予定通り工事を進めることができました。2021年の夏ごろには5階建てのビルが完成する予定です。更にうれしいことに、すでにこのビルへの入居を希望する個人・団体からプロポーザルが提出されており、今後、定額の賃貸収入が入ることが期待されます。

建設中のENAPALの新本部ビルの完成予想図

ENAPALの事務局長・テスファイエさんは、「ビル運営による賃貸収入を得ることで組織の活動費を捻出することができるようになれば、ENAPALの活動の幅が広がるだけでなく、エチオピアにとってハンセン病のない社会の実現に向かう重要なマイルストーンになる。」と期待を寄せています。当財団も、このような画期的なビジネスモデルは、世界的にも類がなく、今後、差別に苦しむハンセン病回復者の権利や生計向上に取り組む世界各地の当事者団体の活動モデルになりうると考えています。

政府とも連携した世界ハンセン病の日の活動

また、ENAPALは保健省など国内の関係団体と協力して、毎年1月の世界ハンセン病の日に、全国レベルの啓発活動を実施しています。今年度は国や州の指導のもと、新型コロナウイルスの感染対策を講じながら、エチオピア北部のハンセン病蔓延州であるアムハラ州にて、世界ハンセン病の日の全国大会を行いました。大会と並行して、新規患者発見活動を行ったこところ、スクリーニングを受けた2000名のうち21名が新たにハンセン病であると診断を受けました。この結果は、実に検査を受けた人の百人に一人がハンセン病を発症していたという、ENAPALにとって極めてショッキングなものでしたが、保健省や州政府の関係者に改めてハンセン病対策の重要性を示す機会となりました。

世界ハンセン病の日の全国大会(エチオピア北部アムハラ州)

団体として活動の資金源を確保し、政府はじめ様々な団体と協力関係の中で着実に自立に向かうENAPALが、ハンセン病のないエチオピアという悲願の達成にむかって進んでいけるよう、当財団も協力していきたいと考えています。