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第一期 COVID-19ハンセン病コミュニティ支援活動報告:ケニア・ナイロビ

笹川保健財団は、助成事業を通じてハンセン病への偏見・差別がなく、病に罹患した人が必要な治療やサービスを享受でき、ハンセン病が問題とならない社会の実現に向けて取り組んでいます。2020年はコロナ蔓延の一年となり、ハンセン病の患者・回復者やその家族らの生活はより厳しいものとなりました。そのため助成事業も、既存の支援に加えコロナ禍でのハンセン病コミュニティを支援するため、①直接的ニーズへの対応、②政府に対するアドボカシー、③積極的な情報発信を組み合わせた包括的な事業を実施しました。第二弾は、ケニアからのレポートをお届けします。

ケニア・ナイロビ 第1期 COVID-19ハンセン病コミュニティ支援活動報告②

ケニアの新型コロナウイルス感染者数は世界の他の国に比べて多くはありませんが、政府より発出された外出制限は貧困層や移民など社会的に脆弱な人々に深刻な影響を及ぼしました。

ケニアの首都ナイロビにはタンザニアの移民が暮らすスラムがあります。この中にはハンセン病回復者も住んでいて、彼らの多くはこれまで物乞いをして生活を営んできました。しかし、政府が不要不急の外出を禁止したため、物乞いという唯一の生計手段を失い、生活が非常に苦しくなりました。さらに移民であるため、ケニア政府の救済支援の対象外であり公的支援を受けることもできず、一刻も早い人道的支援が求められていました。このような背景の中、今回は、最も脆弱な人々の被害を軽減することを最優先に、ナイロビに住むタンザニア移民のハンセン病回復者へ緊急支援を行いました。

ケアが必要な回復者にセルフケアのキットを配布 2020年12月23日、ナイロビ

支援先はハンセン病当事者団体であるIDEA REFACO Kenya Foundation(以下、IDEA REFACO)と国際NGOのInterconnected Health Solutions(以下、IHS)で、期間は、2020年11月から2021年2月までの4カ月間実施されました。IDEA REFACOは2014年の設立以来、ナイロビを拠点に全国のハンセン病回復者の生活向上と権利獲得のために活動を行う団体で、アドボカシーやエンパワメントなどの基盤形成に取り組んできました。IHSは保健分野の事業や熱帯病などの感染症に関する調査を行っている団体です。

両団体は、4カ月の事業期間中、対象地域に住む生活が困窮しているタンザニア移民のハンセン病回復者250人に毎月食料を配布しました。また、障害の悪化を防ぐため150人に対しセルフケアのための衛生用品も支給しました。さらに102人対してカウンセリングを実施し、コロナ禍における当事者のメンタルヘルス問題の解消にも取り組みました。また、タンザニアへの帰国を希望する5人には、故郷までのバスチケットや帰国後の生活資金を準備し、タンザニアのハンセン病回復者組織であるTanzania Leprosy Associationと事前に連絡を取り、帰国後のフォローを依頼しました。

母国タンザニアに帰国する回復者を見送る会 2020年12月18日、ナイロビ

これらの活動の様子はIDEA REFACOのSNSを通してタイムリーに発信され、コロナ禍におけるハンセン病問題を社会に広く伝えることができました。

グローバル化が進む昨今、移民とハンセン病の問題は世界の様々な地域で顕在化しています。移民であるがゆえの診断や治療の遅れ、自国民であれば対象になるはずのセーフティーネットからの脱落など、深刻な問題が多々存在しています。中でも新型コロナウイルス拡大という非常事態の中、移民のハンセン病回復者が置かれている状況は非常に厳しく、本活動は彼らにとって非常に貴重な支援となりました。

IDEA REFACO Kenya Foundation facebook