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フィンランドからの研究発表報告

「フィンランドのパートナー間における暴力被害者の医療費、医療サービスの利用」を研究している久末智実さん(写真左から2番目)は、当財団による奨学金助成を受け、フィンランドのTampere University大学院博士課程に留学中です。この度、久末さんよりEUのエキスパートが集まるセミナーでの研究発表の報告がありましたのでご紹介いたします。

フィンランドの暴力に関する研究・政策に携わるエキスパート達

「7月7日、8日にEuropean Commission が主催する“女性に対する暴力の費用”のウェビナーにフィンランドのエキスパートの一人として参加する機会を得ました。今年はフィンランドがホスト国であり、1) フィンランドにおける女性に対する暴力予防に関連した政策 2)現在進行中の暴力の費用に関する研究プロジェクト、そして私ともう一人の博士学生による3)暴力の費用に関する研究方法についての発表を行いました。その後、質疑応答、各国との状況を共有しました。
欧州ジェンダー平等研究所(EIGE)によると、EU全体でのジェンダーに基づく暴力(Gender-based violence: GBV)のコストは年間3660億ユーロにも及ぶと推定されています。しかし、EU諸国においても北欧諸国のように男女平等、病院などのデータ管理が進んでいる国もあれば、男女平等に対して保守的な考えが強い国もあります。また“ジェンダー” という意味も時代により変化してきています。そのため、EU諸国内で同様のデータを収集することは文化、医療や社会サービス、法律などの違いにより大変困難ではありますが、まずその違いを理解し、話し合うことによってさらに理解を深め、次のステップに向けて取り組んでいくことを確認しあいました。
今回このようなセミナーに準備段階から参加し、発表できたことは、大変貴重な体験でした。
また“違いを乗り越えて前に進む”ことの難しさと重要さを痛感しました。女性に対する暴力はEUだけの問題ではなく日本も含め世界における重要な課題です。今後も引き続き研究活動に励みたいと思います。

参考
EIGEのホームページ
https://eige.europa.eu/news/gender-based-violence-costs-eu-eu366-billion-year
(このセミナーはmutual learning programの一環として行われました)
https://ec.europa.eu/info/policies/justice-and-fundamental-rights/gender-equality/who-we-work-gender-equality/mutual-learning-programme-gender-equality_en 」

自然を文化として日常に取り込み、リラックスしたイメージが強いフィンランドですが、COVID-19に関連したパートナー間の暴力の増加は世界的に社会的関心を集め、暴力をめぐる社会環境が一段と変化しているそうです。

昨年は、当財団の起業家育成事業の講義の一環として、久末さんにオンラインでお話いただき、研修生と交流いただく機会がありました。日本では訪問看護師が訪問先で、子どもや高齢者への虐待などの問題に直面しケアすることが多いですが、これらはフィンランドでは主にソーシャルワーカーの役割だそうです。久末さんは今後、日本の在宅/訪問看護において何ができるのか、虐待の早期発見、予防・対策についてのシステム構築に向けての協働も検討してくださっています。