キテッシュ・ジョセフさんにとって、友人や遊び仲間にからかわれるまで、腕や背中にある円形の病変をあまり気にとめることはありませんでした。からかわれてからは、友達と遊んだり、川で水遊びをするのをやめてしまいました。ある時、ジョセフさんは保健所に行き、医師から、この病気は単なる皮膚病で、軟膏を塗れば治ると告げられました。しかし、その軟膏は効かず、症状は悪化するばかりでした。

心配になった母親は、ジョセフさんを病院に連れて行き、大きな公立病院を紹介され、皮膚科を受診するよう勧められました。しかし、皮膚科を受信することは叶わず、担当の医師は注射やアレルギーの薬を処方しましたが、これも全く効果はありませんでした。ケニア西部のアルペ病院でハンセン病と診断されるまで、誤診と手探りの治療がほぼ1年間続きました。そのころにはジョセフさんは学校を退学してしまいました。

MDT薬を開始すると、全身、特に顔の皮膚が黒く硬くなり、正常な質感と色を取り戻すのに時間がかかりました。病気から解放されて約8年になりますが、まだ普通の生活を取り戻せてはいません。しかし、3年前に学校に戻り、中学を卒業することができました。

中等教育の最終学年であった2018年、彼はジョシュア・オラガ氏に出会い、前向きに踏み出す方法として、自分の病気の経験を人に話すことを勧められました。その時から、出会う人々に病気のことを伝えるようになりました。その結果、周囲の人々のハンセン病への理解が深まり、また、誰かがハンセン病に罹ったのではないかと疑われる時には、相談に来るようになったとのことです。彼は完全に自信を取り戻し、病気についてよく理解していない人たちから受ける差別に悩まされることはなくなりました。

ジョセフさんは、自身の経験から、ハンセン病に関する正しい知識を持つ臨床医が少ないため、場所によって医療サービスに大きなギャップがあると考えています。アルーペ病院を紹介されたのは幸運でしたが、自宅から遠く離れたアルーペ病院まで通うのは、費用もかかり、とても大変なことでした。

「ハンセン病はずっと牢獄の中にいるようなものだと思います。
完治しても病気だと思われてしまうのです。
だから、私はハンセン病のことを人に話し、正しい知識を共有するようにしています。」