笹川ハンセン病イニシアチブは、世界ハンセン病の日に合わせ、2023年1月23日、24日に、ローマ アウグスティヌス教皇庁研究所講堂にて、ローマ教皇庁人間開発省、フランス ラウル・フォレロー財団、イタリア アミーチ・ディ・ラウルフォレロー協会と共同で、「ハンセン病に関するバチカンでの国際シンポジウム〜誰一人取り残さない〜」を開催します。

2日間にわたるシンポジウムでは、ハンセン病をはじめとする顧みられない熱帯病（NTD: Neglected Tropical Disease）の当事者、国際NGO、宗教団体、保健問題や人権問題の専門家が一堂に会し、ハンセン病と病気にまつわる問題のない社会、さらには、「誰一人取り残さない」インクルーシブな社会を実現するために、今、どのようなアクションが必要とされるかについて議論を交わします。

当日は、ローマ教皇庁人間開発省を通じて教皇聖座からのメッセージが寄せられる他、世界保健機関（WHO）テドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長、国連人権高等弁務官フォルカー・テュルク氏、国連特別報告者アリス・クルス氏、また、主催団体の代表としてWHOハンセン病制圧大使／日本財団会長笹川陽平氏らのスピーチが予定されています。

本シンポジウムは、2016年に同会場で開催された「ハンセン病と差別を考える国際シンポジウム～ハンセン病患者・回復者の尊厳の尊重と総合的なケアへ向けて～」のフォローアップとして開催されるものです。前回の会議開催から6年が経過した現在、新型コロナウイルスのパンデミックはハンセン病新規患者発見活動の停滞や、病気の治療や後遺症のケアが受けにくくなるなど、ハンセン病対策に大きな影響を及ぼしています。

今回のシンポジウムでは、パンデミックがハンセン病患者やその他の社会的弱者、特に病気により障害を負った人々の生活にどのような影響を与えたか検証するとともに、彼らのニーズに応えるためのベストプラクティスを、特に宗教団体の役割に注目して紹介します。

また、本シンポジウムでは、「グローバル・アピール2023～ハンセン病患者と回復者に対する社会的差別の撤廃に向けて～」の宣言式典も行われます。グローバル・アピールは、2006年に笹川陽平氏の主導によって、ハンセン病と差別の問題に焦点を当て、インクルーシブな社会の実現に向けて社会的な機運を醸成するために始められました。以来、毎年、1月の最終日曜日の世界ハンセン病の日に合わせて、社会的に影響力のある団体や個人の賛同を得て発信されています。今年のグローバル・アピールの賛同者は、本シンポジウムの主催者及び参加者で、ミス・ワールド・ブラジル2022のレティシア・フロタ氏が宣言文を読み上げます。フロタ氏は自国ブラジルでハンセン病差別撤廃活動のアンバサダーとして活動しており、自身のソーシャルメディアでも活発にハンセン病への理解を呼びかける発信を行っています。

なお、本シンポジウムは、新型コロナウイルスのパンデミック下でもハンセン病問題が置き去りにされないために、笹川ハンセン病イニシアチブが2021年に開始した「ハンセン病を忘れないで」キャンペーンの一環として開催されます。

また、1月23日正午から記者会見を行います。ハンセン病回復者代表、フランスのラウル・フォレロー財団、イタリアのアミーチ・ディ・ラウルフォレロー協会、WHOハンセン病制圧大使の笹川陽平氏が登壇予定です。 シンポジウムの詳細、また参加ご希望の方（現地／オンライン）はウェブサイトをご覧ください。

笹川ハンセン病イニシアチブについて

笹川ハンセン病イニシアチブは、笹川陽平WHOハンセン病制圧大使と笹川保健財団および日本財団がハンセン病のない世界の実現を目指す戦略的アライアンスです。笹川大使および大使が会長を務める日本財団（1962年設立）と、ハンセン病対策に特化した財団として設立された笹川保健財団（1974年設立）は、50年近くにわたり世界各地でハンセン病対策に取り組んでいます。「医療面」では、1975年以降、WHOを通じて世界各国政府によるハンセン病対策を支援しており、その累計は約2億ドルにのぼります。また、「社会面」については、日本政府などと連携し、国連総会における「ハンセン病患者・回復者・その家族らに対する差別撤廃決議」の採択(2010年)や、国連人権理事会を通じた国連ハンセン病差別撤廃特別報告者の設置(2017年)に大きく貢献しています。

ハンセン病について

ハンセン病は、らい菌が主に皮膚や神経を侵す慢性の感染症です。コロナウイルスのパンデミックにより新規患者発見活動が停滞する以前は、年間20万人余りの新規患者数が報告されていました。治療法が確立された現代では薬を服用すれば治る病気ですが、治療の開始が遅れたり、治療を中断したりすると、抹消神経が障害を受け、手足・顔面の知覚麻痺や筋力低下などの身体的な障害につながることがあります。推定300万～400万人がハンセン病によって何らかの障害を持ちながら生活していると考えられています。また、ハンセン病は治る病気にも関わらず、多くの回復者およびその家族が、ハンセン病に対する社会の根強い偏見や差別に今なお苦しんでおり、教育や雇用、社会参加の機会が制限されるなどの問題が残っています。