笹川ハンセン病イニシアチブ（東京都港区）はノルウェーのベルゲン大学と共催で、ゲルハール・アルマウェル・ハンセン博士によるらい菌発見150周年を記念し、2023年2月28日にノルウェー・ベルゲン市にて記念イベントを開催します。また、同日に、オンラインでもウェビナーを実施します。

イベントには、ベルゲン市長のリン・クリスティン・エンゴ氏、WHOハンセン病制圧大使 笹川陽平氏、ハンセン病当事者(ブラジルおよびガーナ)、ハンセン博士のひ孫にあたるアビ・パトリックス氏、ベルゲン大学とベルゲン市の専門家が登壇し、ハンセン病問題の過去・現在・未来についての見解を語ります。

また、記念ウェビナーでは、上記に加えハンセン病の歴史保存の専門家も参加し、ハンセン博士の功績を辿ります。WHO事務局長テドロス・アダノム氏およびエチオピア保健大臣タデッセ・リア氏のビデオメッセージも、ベルゲンでのイベントとウェビナーで紹介されます。

ノルウェー・ベルゲン市でのイベントへの参加はベルゲン大学のウェブサイト（https://www.uib.no/en/ledelsen/157014/armauer-hansen-2023-anniversary）を、

オンラインウェビナーへの参加は笹川ハンセン病イニシアチブのウェブサイト（https://sasakawaleprosyinitiative.org/latest-updates/initiative-news/3257/）をご覧ください。なお、イベントは英語での開催となります。

ハンセン病の病原体であるらい菌は、1873年2月28日に、ベルゲン市の研究室でハンセン博士によって発見されました。この発見は慢性疾患の原因として病原体が特定された初めての例であり、ハンセン病のみではなく、世界の保健衛生に大きな影響を与えた歴史的に意義あるものです。

ハンセン病はらい菌が主に皮膚や神経を侵す慢性の感染症で、人類最古の感染症と言われ、古くは聖書にも記載があります。1873年にハンセン博士によって原因菌が特定されるまで、長きにわたり、天刑、業病、呪いなどと考えられ、忌み嫌われてきた歴史を持ちます。COVID-19の流行で症例発見活動が困難になる以前は、年間約20万人の新規患者数が報告されていました。

最初に有効な治療法が発見されたのは1940年代でしたが、ハンセン博士のらい菌発見から約100年後の1980年代になって多剤併用療法が確立され、現代では薬を服用すれば治る病気となりました。しかし、ハンセン病が不治の病であった何世紀もの間に生まれた迷信や悪しき慣習は、世界中で人々の心に深く根ざし、ハンセン病を理由として、教育や雇用、社会参加の機会が制限されるなど、今なお、病気への偏見や差別に苦しむ人々がいます。このような社会的スティグマが治療の妨げにもなっています。

日本を含む世界各国では、差別的な意味を含む古い病名を使わず、らい菌の発見者であるハンセン博士にちなんで「ハンセン病」と呼ばれることがあります。これは、病名を変えることで、病気の持つ偏見を払拭しようとする狙いが含まれています。

なお、2023年2月28日開催のイベントは、ハンセン病問題が置き去りにされないために、笹川ハンセン病イニシアチブがCOVID-19の流行下の2021年に開始した「ハンセン病を忘れないで」キャンペーンの一環として開催されます。同じくキャンペーンの一環として、2023年6月21−22日には、ベルゲン市において、国際会議の開催を予定しています。

ベルゲン大学について

ノルウェーにある中規模のヨーロッパ大学で、約18,000人の学生と4,000人の教職員を擁しています。7つの学部が、伝統的な大学の学問分野のほとんどをカバーしています。学部には40の専門学科、学際的な研究センター、研究所があります。

笹川ハンセン病イニシアチブについて

笹川ハンセン病イニシアチブは、笹川陽平WHOハンセン病制圧大使と笹川保健財団および日本財団がハンセン病のない世界の実現を目指す戦略的アライアンスです。笹川大使および大使が会長を務める日本財団（1962年設立）と、ハンセン病対策に特化した財団として設立された笹川保健財団（1974年設立）は、50年近くにわたり世界各地でハンセン病対策に取り組んでいます。「医療面」では、1975年以降、WHOを通じて世界各国政府によるハンセン病対策を支援しており、その累計は約2億ドルにのぼります。また、「社会面」については、日本政府などと連携し、国連総会における「ハンセン病患者・回復者・その家族らに対する差別撤廃決議」の採択(2010年)や、国連人権理事会を通じた国連ハンセン病差別撤廃特別報告者の設置(2017年)に大きく貢献しています。