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ワシントン大学のホームページで看護フェローが紹介されています

Sasakawa看護フェローとしてワシントン大学DNP(看護実践博士)課程在籍の渡邊美幸さんが、大学のホームページで紹介されています。
日本語訳を以下に紹介しますのでぜひご覧ください。


笹川保健財団の支援を受け、ワシントン大学看護学部の看護実践博士課程に在籍する渡邊美幸さんは、
看護のリーダーシップを見つめなおす変革の旅に出ている。

変革の旅

日本の喧騒の都会からペルーのアマゾンの熱帯雨林まで、渡邊美幸さんは看護のリーダーシップを見つめなおす変革の旅に出た。


ワシントン大学(UW)看護学部の看護実践博士課程(DNP)プログラムでの学びと、大きく異なる医療環境での実地経験を通じて、渡邊さんはグローバルヘルスを改善する道を切り拓いている。
笹川保健財団の支援を受け、変革への情熱に突き動かされる彼女は、看護師の地位と、患者へのケアを向上させるために、文化的・制度的ギャップを埋める方法を学んでいる。

ペルーのイキトス、パカヤ・サミリア国立保護区にある人里離れた先住民コミュニティ。

”私たちのパートナーシップは、相互尊重、価値観の共有、そして社会的弱者の生活に変化をもたらすことへの深いコミットメントの上に築かれています。”

マーラ・サーモンUW看護学部
看護・グローバルヘルス学科教授

目的意識を一つに

東京で小児集中治療室の看護師として働いていたとき、渡邊さんは医療システムにおける重大なギャップに気づいた。看護師は最低限の自主性しか持たず、医師の判断を待つことが多く、そのために重要なケアが遅れることがある。このことに気づいた渡邊さんは、日本におけるナース・プラクティショナーの役割の拡大を提唱したいという思いを募らせた。笹川保健財団のSasakawa看護フェロー・プログラムの支援を受けて実現したUWでの学びは、彼女の視野を広げ、変革への決意に火をつけた。

笹川保健財団は、ハンセン病の撲滅を目的に1974年に設立され、以来、「すべての人々に健康と尊厳を」というミッションのもと活動している。近年は、在宅看護の能力向上や、Sasakawa看護フェローのようなプログラムを通じて、日本の看護師が社会の変革を推進できるよう支援している。

フェローシップの参加者は、世界でもトップクラスのUW看護学部を含む、米国とカナダの一流大学に進学する。
2021年から23年にかけての応募者430人の中から選ばれたフェローはわずか30人であり、渡邊さんのこの名誉あるプログラムへの合格は重要な功績である。

プロジェクトが実施されたペルーのイキトスにあるインフォーマルな都市コミュニティ、クラベリト。

ワシントン大学看護・グローバルヘルス学科のマーラ・サーモン教授は、「笹川保健財団は、グローバルな看護のリーダーシップを推進する礎となってきました。私たちのパートナーシップは、お互いを尊重し、価値観を共有し、弱い立場にある人々の生活に変化をもたらすという深い決意の上に成り立っています。」と説明した。

笹川保健財団の喜多悦子会長と地域保健事業部のチーフ・プログラム・オフィサー田中麻紀子氏は、このような協力関係の形成に尽力してきた。「彼らのビジョンと献身が、フェローシップ・プログラムの成功に極めて重要な役割を果たしています」とサーモン教授は付け加えた。

このフェローシップは海外留学に不可欠な資金を提供し、日本の多くの学生が直面する経済的な障壁に対処するとともに、教育的な支援システムも提供する。「Sasakawa看護フェローは、私に経済的な支援を与えてくれただけでなく、互いに学び合うフェロー仲間とのつながりや実践的な経験を積むための看護指導者たちとのつながりをも与えてくれました」と渡邊さんは語った。

グローバルな視点:日本とペルーをつなぐ

フェローとしてDNP取得を目指す傍ら、渡邊さんはグローバルヘルス分野の看護プログラムを履修し、さらに理解を深めた。
ワシントン大学グローバルヘルス学部のトラベル・フェローシップ、トーマス・フランシス・ジュニア奨学金によるキャップストーン・プロジェクトを実施し資金援助を受けて、彼女はペルーのアマゾンの熱帯雨林に旅をした。

当初、渡邊さんは地域コミュニティが社会的サービスを利用できるよう、サービスについての案内用紙を配布する予定だった。しかし、現地に到着後、彼女はそのプロジェクトが地域社会のニーズに合致していないことに気づいた。多くの住民が読み書きに苦労し、洪水被害の修復など、より差し迫った問題を抱えていた。

2024年3月、グローバルヘルス看護センターによる年次グローバルヘルス看護セレブレーションでの渡邊さんの最終発表。

「そこで、私はプロジェクトを変更しました」と渡邊さんは言う。
彼女は、人々の社会サービスへのアクセスを妨げている障壁を理解することに焦点を移し、これらの問題の根本原因に取り組むことが重要であると認識した。

このペルーでの経験は、彼女の医療と看護に対する考え方を大きく変えた。当初、彼女は看護師の職域を拡大することが農村部の健康問題に対する重要な解決策だと考えていたが、それは日本での経験によって形成された信念であった。
ペルーでの経験から、医療アクセスを改善するためには、より広範な政策の変更と現地の状況に対するより深い理解が必要であることを学んだ。「根本的な原因に対処しなければなりません」と渡邊さんは指摘する。

長崎県福江島での笹川の訪問看護体験の初日を迎えた渡邊さん。

”世界中の成功事例を研究することで、より効果的に改善点を見つけることができます。”

渡邊美幸UW看護学部
Sasakawa看護フェロー

経験の架け橋:グローバルな知見を地域の課題に活かす

笹川保健財団はまた、西日本の小さな島町への3週間の旅も企画し、渡邊さんは日本の高齢化、特に地方が直面する課題を視察した。「一人暮らしの高齢者や、お互いに介護者となっている老夫婦を多く見かけました」と彼女は言う。
この経験は、彼女がペルーで遭遇したテーマと重なり、医療ソリューションをそれぞれの地域特有のニーズに適応させることの重要性を強く印象づけた。

渡邊さんは、DNPの臨床業務の一部を米国の農村部で行い、そこで得たグローバルな見識を応用することで、この探求をさらに進めるつもりである。「それぞれの医療システムには長所と短所があります。世界中の成功事例を研究することで、より効果的に改善点を見つけることができます。」と考察する。

人々の健康の公平性に関する新たなプログラム履修に乗り出した渡邊さんは、日米の社会的弱者のための政策転換にとりくもうとしている。笹川保健財団の支援を受け学ぶDNPプログラムで、渡邊さんは視野を広げ、世界規模で看護の変革をリードするために必要な知識とスキルを身につけている。

ペルーのアマゾン熱帯雨林の航空写真。


2022年にSasakawa看護フェロー1期生として渡米した渡邊さんは、この春、DNP課程を修了予定。今後の活躍が期待されます。