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フォンティリアス療養所 歴史保存プロジェクト

スペイン東部、地中海に面するバレンシアから車を2時間ほど走らせたアリカンテ地方に「サンフランシスコ・デ・ボルハ・デ・フォンティリアス療養所」があります。

スペインでも古くからハンセン病への偏見・差別が激しく、患者の多くは村から離れた洞窟や小屋で暮らしていましたが、1909年、イエズス会のカルロス・フェリスと弁護士ホアキン・バレスターが「患者が少しでも心穏やかに暮らせる地を」との理念でこの療養所を設立しました。一定の自由を謳歌できる「療養型コロニー」を目指していたフォンティリアスでは、敷地内に医療棟、研究棟、居住棟の他にも教会や映画館、美容院などもあり、一つの小さな村として機能していました。

しかし、設立から10年を経過してもなお、周辺住民のハンセン病に対する偏見差別は強く、1923年には療養所の周辺を囲む壁が建設されました。壁の高さは3メートル弱、幅60センチ、長さは3キロにもおよぶものでした。1930~40年代には400名をこえる患者が暮らしていましたが、1968年以降は外来治療が主流となったため、入所者数は減少し、現在では約30名が暮らしています。

フォンティリアス療養所全景
アーカイブ室

フォンティリアス療養所には2,300をこえる医療ファイルや3,000をこえる写真、手紙、地図、研究報告書のほか、書籍や機関誌、カルテなどの膨大な貴重史料が残されています。療養所に残される歴史は、スペインにおけるハンセン病対策のみならず、ハンセン病に対する社会の反応、社会全体の歴史を物語っています。しかし、それらは保存のための整理がされておらず、デジタル化やインターネット上での掲載もされていないため、知ることのできる人が限られていました。

そこで、当財団からの支援で史料の分類・整理・保存、目録作成等を行い、最終的にはデータベース化することで、外部からアクセスできる状態を目指しています。

2018年度は療養所内にアーカイブ室が設置され、文書史料の目録作成・フォンティリアスの歴史に関する関係者への聞き取りを行い、その記録を作成・保管しました。また選定した一部の記録、写真などはデジタル化され、データベースの構築が完了されたことから、スペイン語圏最大の電子図書館「ミゲル・デ・セルバンデス・デジタル図書館」で公開されており、現在・未来の研究者の研究に有効な情報発信システムとして活用されることが期待されています。

 
整理された史料
整理保存された史料
 

今後は、アーカイブ室に保存されている文書史料の詳細整理、検索システムの構築、デジタル化に加え、当時の生活を物語る医療器具や生活用品などの物質的史料の収集・整理・保存が行われます。また、現在療養所外で暮らす回復者や職員の聞き取り調査も予定されており、口述歴史の集積が期待されています。

フォンティリアス療養所について詳しく知りたい方は以下のサイトをご参照ください。

ミゲル・デ・セルバンデス・デジタル図書館におけるFontilles史料群

http://www.cervantesvirtual.com/portales/fontilles_y_la_lepra_en_espana/

-機関紙 『Fontilles』

http://www.cervantesvirtual.com/portales/fontilles_y_la_lepra_en_espana/revista_fontilles/

1905年、「La Lepra」として発行され、1909年から「Fontilles」というタイトルで現在まで発行され続けている月刊誌です。療養所の活動を伝えています。

-機関紙 『Revista de Leprología』

http://www.cervantesvirtual.com/portales/fontilles_y_la_lepra_en_espana/revista_leprologia/

1944年から発行されているジャーナルです。Fontillesの医師たち、又、スペインの他地域やラテンアメリカ諸国の医師たちによる研究内容を公表し、スペイン語圏に広く配布されています。

Leprosy.jp 

http://leprosy.jp/movie/portugal_spain/

日本財団笹川陽平会長がフォンティリアス療養所を訪れた際の様子を動画でご覧いただけます。