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NLRメコン リハビリテーションプログラム

ベトナムは1995年に公衆衛生上の問題としてハンセン病の制圧を達成しました。一方で現在も国内に20のハンセン病療養所が存在し、数多くのハンセン病回復者(以下、回復者)が暮らしており、その中で障害を持つ回復者は2~5万人いると推計されています。回復者に対する差別や偏見の軽減のため、ベトナム政府による大規模な保健教育や啓発活動の結果、回復者への偏見や差別は他国より比較的小さく、一般社会に受け入れられつつあると言われています。

しかし、NLRメコン(注1)が活動を実施しているコントゥム省とザライ省の山間地域にあるハンセン病蔓延地区は、文化的・慣習的にハンセン病への偏見や差別が強く残る地域も多く、貧困の問題も抱えています。この地域では、少数民族ごとの言語も存在し、共通言語であるベトナム語の識字率が低いことから、啓発活動が難しく、自分たちが受けられる社会・医療サービスの存在や手続きについての知識を持っていません。

また、少数民族が多数存在することから、政治的にデリケートな面もあり、活動できる国際NGO団体が限られています。ハンセン病問題に特化したネットワークやプログラムがほとんどないことも、問題を解決する障壁の一つとなっています。そこで、回復者だけではなく、他の障がい者と共に社会・医療サービスを受けられるように促進する活動がNLR メコンによって展開されています。

自分たちが受けられる社会・医療サービスを知るためには、自分たちが持つ権利やサービスの内容を知ることが大切です。また、サービスを提供する側にも問題点があり、医療従事者や関係者がサービスを受ける側へ情報を提供する意識の低さが指摘されました。双方の意識を高めることで、ハンセン病回復者・障がいを持つ人々の社会・医療サービスへのアクセス改善が行われました。

障がい者や障がいをもつ回復者だけでなく、社会福祉士などのサービス提供者が一堂に会し、「障がい者が社会活動へ参加するためにはどのような方法があるのか」「どのようにすれば参加してもらえるのか」「事業を進めるにはどのように計画書を作成すればいいのか」などを学ぶ機会を設けました。ベトナムの教育・健康・法的支援サービスを学び、理解がより進むようにクイズ形式で障がい者の権利について話し合うなどの工夫がなされています。

他にも、村内に貯水タンクを設置し、衛生環境向上に務め、経済的自立支援として養豚、ほうきの製造、牛の繁殖など様々な事業が展開されています。牛の繁殖が成功した場合には、他の障がい者・回復者に譲り、それぞれが経済的に自立できるように計画されています。

コントゥム省でのリハビリテーション事業は2018年度で完了していますが、ザライ省では4年計画の最終年の事業を2019年度に実施しています。回復者・障がい者共に積極的な社会への参加が期待されています。

 

 

(注1)

Netherlands Leprosy Relief(NLR)Mekong

1981年に設立され、ベトナム国内で障がい者・ハンセン病回復者の支援を行っています。

「ハンセン病と障がいによる排斥のない世界」を目指し、5つの戦略を持って活動しています。

1)専門家の助言を活かしたトレーニングや能力強化

2)障がいを持つ人々の貧困解消や人権の促進、社会参加への政策や事業の発展

3)ハンセン病に関する事業を他の障がい者事業と統合する

4)様々な政策に障がい者の意見を反映させ、参画する機会を持つ

5)リハビリサービスやセルフケアの促進、スティグマを減少させることで自立性の向上を目指す

*NLR Mekongは2020年9月よりResearch Center for Inclusion(RCI)に名称変更となります。地域に根付いた団体をめざし、今後も精力的に活動を行う予定です。

(HPは2019年10月公開予定)