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中国広東省・広西省におけるハンセン病回復者の生活向上支援

中国広東省・広西省のハンセン病回復者の生活向上のための支援活動を行うHANDA(HANDA  Rehabilitation and Welfare Association/広東省漢達康福協会)の組織強化のための支援を行いました。

HANDA(は1996年、ハンセン病回復者ネットワークIDEA(注1)の中国拠点として設立され、設立以来、25万人とも言われる中国のハンセン病回復者(以下、回復者)の自立と社会復帰のため、経済的自立支援、教育支援、発言の場の確保など、多岐にわたる活動を展開しています。当財団では、HANDAの設立準備の1995年から支援を続けています。

HANDAの「HAN」は、ハンセン病の菌を発見したノルウェーの医師、アルマウェル・ハンセン氏(注2)より、「DA」は患者へ献身的な奉仕を捧げてきたハワイ州モロカイ島のダミアン神父(注3)より取り、ハンセン氏の科学的知識とダミアン神父の人道的精神の双方をあわせもつことをモットーに名づけられました。その「ハンダ」という音の響きに合わせて「漢達」と命名し「康福」は中国語でリハビリテーションを意味しています。

中国では、1950年以前、政府のハンセン病政策はありませんでした。1953年から政府のハンセン病政策が始まり、隔離政策が主たる戦略として実施され、ハンセン病の診断を受けた患者は家族や社会から切り離された僻地で生活することを余儀なくされました。

1980年代に入ると隔離政策が撤廃され、通院治療が可能となったため、家族とともに暮らせるようになりました。

しかし、根強く残ったハンセン病への偏見差別や、適切な治療がされなかったがゆえの障がい悪化などで、隔離政策が撤廃された後も回復者はそのまま村で暮らしています。広大な国土のために情報が届きにくい地域もあり、それぞれの地域で独自の文化と思想が形成されているため、国の政策だけではまかないきれない部分があります。そのため、回復者のニーズを的確にとらえ、細やかに対応できるHANDAの存在は大変大きいと言えます。中国国内の回復者は推定25万人いると言われており、医療面・社会面の双方からの包括的アプローチで患者・回復者の生活の質の向上に大きく貢献しています。

医師による眼の検査

2018年度、当財団が支援した主な活動は以下の通りです。

①理事会開催および理事によるモニタリング活動

 
理事会の様子
理事による現地訪問

②ニュースレター発行

年4回、約1,800部発行。活動報告や村からの報告、ボランティアの報告、寄付金の会計報告などを掲載。

③定着村およびコミュニティとの交流活動

定期的にHANDAのスタッフが村を訪問し、住民と様々なイベントを通して交流を深めています。南海紅衛村で開催された将棋大会では、定着村住民がホスト役を務め、イベントを成功させたことで、社会との交流について自信を持つことができるようになりました。

④啓発イベントの開催

啓発イベント
有名な絵画アーティストと一枚の絵を仕上げました

⑤ボランティアの育成と能力強化

ボランティアとの交流会
ボランティア研修会
  • 持続可能な運営強化のためのブランディングと資金調達

中国ではNGO(Non-Governmental Organization(非政府組織))という概念が日本のように浸透しておらず、中国国内で寄付金を集めることが容易ではありません。特に組織強化や現地訪問に関する寄付は集めるのが大変困難だと言われています。しかし、回復者がつくった質の高いはちみつやお茶などを市場で販売し、売上を獲得してその一部を運営費にあてる他、啓発活動の効果で少しずつ寄付金が集まるなど持続的に組織が運営していく取り組みを行っています。

HANDAは回復者のニーズを適切に把握し、きめ細やかに対応をしています。また、その活動を常に公開することで、回復者のみならず一般市民からの信頼を得ることに成功しています。今後は、組織の基盤強化のため、クラウドファンディングなどを活用し、運営を持続するための仕組み作りに取り組んでいきます。

・ハンセン病回復者ネットワークIDEA(注1)

世界各地で今なお残る、ハンセン病に対する根強い差別や偏見の問題を解決するため、1994年、ハンセン病当事者や回復者が立ち上がり、ブラジルでIDEAが設立されました。IDEAはハンセン病患者・回復者・支援者によって運営される国際ネットワーク型のNGOで世界30数か国に活動拠点があります。

http://www.idealeprosydignity.org/index.html

・アルマウェル・ハンセン(注2)

→ハンセン病の菌(らい菌)を発見したノルウェーの医師。らい菌が発見されたのは1873年で「ハンセン病」という名称はハンセン医師の名前に由来しています。

ハンセン病の医療への取り組みについては以下のサイトをご参照ください。

・ダミアン神父(注3)

→ベルギー出身の神父。1873年ハワイ州モロカイ島、カラウパパ療養所でハンセン病患者の救済に取り組み、自らもハンセン病を発症しながらも最期までハンセン病患者のために献身的に働き、人々に希望と人間としての尊厳を与えました。

ダミアン神父が救らい活動を行ったモロカイ島、カラウパパ療養所については以下のサイトをご覧ください。

http://leprosy.jp/world/island/island13/