笹川陽平WHOハンセン病制圧大使（2001年より在職、日本財団会長、東京港区）は、5月22日からスイス・ジュネーブにて開催される第75回世界保健機関(WHO)総会に出席し、コロナ禍により停滞するハンセン病対策への協力を呼びかけます。

22日に行われた総会の開会式では、笹川氏のWHO世界保健機関事務局長グローバルヘルス賞受賞が発表され、授与式では世界から集まった保健大臣ら代表団にビデオメッセージで、最終曲目面を迎えているハンセン病問題を解決するために、協力を呼びかけるとともに、WHOによってハンセン病対策優先国と指定されている23カ国等の中から、インド、ブラジル、インドネシア、コンゴ民主共和国、バングラデシュ、エチオピア等18カ国（面談予定国リスト参照）の代表と個別に面談を行い、各国の状況の聞き取りを行います。笹川氏は、2001年の大使就任以来、毎年、総会にて同様の面談を行ってきましたが、今回は2018年以来、4年ぶりの実施となります。

新型コロナウイルス蔓延により、ハンセン病に関わるさまざまな取り組みが縮小・中止を余儀なくされました。特に多くの国で新規患者の発見や治療活動に遅れが生じ、2021年9月WHO発表の2020年のハンセン病統計では、世界の新規患者数が対前年比37％減少しました。ハンセン病は発見が遅れると、身体的な障害につながる恐れがあり、今後、障害を伴う新規患者数の増加が懸念されています。

また、コロナ禍がもたらした社会変容は、元々多くが脆弱な環境にあるハンセン病当事者に対して経済的にも深刻な打撃をもたらしました。このような事態に鑑み、笹川大使は2021年8月から“Don’t forget leprosy（ハンセン病を忘れないで）”キャンペーンを主導し、コロナ禍にあってもハンセン病問題を置き去りにすべきでないというメッセージを世界に向けて発信してきました。当初、このキャンペーンは今月末までを予定していましたが、コロナ禍が長期化していることから、更に一年間延長されることとなりました。

面談予定国リスト

アジア・オセアニア：インド、インドネシア、キリバス、ネパール、バングラデシュ、マーシャル諸島、ミャンマー、ミクロネシア連邦
アフリカ：アンゴラ、エチオピア、コートジボワール、コモロ連邦、コンゴ民主主義共和国、ソマリア、南スーダン、モザンビーク、ナイジェリア
南米：ブラジル

笹川陽平WHOハンセン病制圧大使について

笹川氏は2001年にWHOハンセン病制圧大使に就任以来、今日まで、病気からの解放と偏見や差別からの解放はオートバイの前輪と後輪であり、両方が機能しなければ前進はないとして、「医療面」と「社会面」の双方から「ハンセン病問題のない世界」の実現に向けて活動を続けてきました。現場には問題点と答えがあるという信念から、世界中の現場を200回以上訪れ、多くのハンセン病患者・回復者と会い、直接話を聞き、彼らの人生を見てきました。訪れた国は20年間で約100カ国に上ります。

笹川ハンセン病イニシアチブについて

笹川ハンセン病イニシアチブは、笹川保健財団および日本財団と笹川陽平WHOハンセン病制圧大使がハンセン病のない世界の実現を目指す戦略的アライアンスです。笹川大使および大使が会長を務める日本財団（1962年設立）と、ハンセン病対策に特化した財団として設立された笹川保健財団（1974年設立）は、45年以上にわたり世界各地でハンセン病対策に取り組んでいます。「医療面」では、1975年以降、WHOを通じて世界各国政府によるハンセン病対策を支援しており、その累計は約2億ドルにのぼります。また、「社会面」については、日本政府などと連携し、国連総会における「ハンセン病患者・回復者・その家族らに対する差別撤廃決議」の採択(2010年)や、国連人権理事会を通じた国連ハンセン病差別撤廃特別報告者の設置(2017年)に大きく貢献しています。

ハンセン病について

ハンセン病は、らい菌が主に皮膚や神経を侵す慢性の感染症です。2019年には世界で年間20万人余りの新規患者数が報告されています。治療法が確立された現代では完治する病気ですが、治療の開始が遅れたり、治療を中断したりすると、抹消神経が障害を受け、手足・顔面の知覚麻痺や筋力低下などの身体的な障害につながることがあります。また、ハンセン病は完治する病気にも関わらず、多くの回復者およびその家族が、ハンセン病に対する社会の根強い差別や偏見に今なお苦しんでいます。