JP / EN

News 新着情報

【プレスリリース】WHO本部から発信:ハンセン病差別撤廃のための「グローバル・アピール」治療可能な病気による社会からの排除に終止符を

笹川ハンセン病イニシアチブは、1月31日、スイス・ジュネーブのWHO本部において「ハンセン病差別撤廃のためのグローバル・アピール2024」式典をWHOと共催しました。式典では、WHO事務局長テドロス・アダノム博士と、WHOハンセン病制圧大使/日本財団会長の笹川陽平氏が、ハンセン病に対する正しい知識を広めることでいわれのない差別をなくし、治療が可能な病気のために人々が社会から取り残されることがないようにと訴える宣言文に署名しました。

式典で宣言文を読み上げる子供たちを見守るWHO事務局長テドロス・アダノム博士(右)とWHOハンセン病制圧大使/日本財団会長笹川陽平氏(左)

グローバル・アピールは笹川大使のイニシアチブにより2006年にスタートし、今年で19回目を迎えました。毎年、1月の最終日曜日の世界ハンセン病の日前後に、世界的に影響力のある団体や個人をパートナーに迎え、ハンセン病に対する差別の撤廃を広く呼びかけています。これまで、ノーベル平和賞受賞者、世界法曹協会、世界医師会、列国議会同盟などがパートナーとなりましたが、今年は、そのリストにWHOが加わりました。

イベントは若手バイオリニストのジュゼッペ・ジッボーニ氏と吉本莉乃氏によるストラディバリウスのミニコンサートで華やかに幕を開けました。

国連ハンセン病差別撤廃特別報告者のベアトリス・ミランダ・ガラルザ氏はビデオメッセージで、年間約20万人の新規患者と、数百万人のハンセン病による障害を負った人々が存在することを考えると、人権の原則に根差したサポートとケアシステムの確立が急務であるとし、質の高いサポートとケアシステムへのアクセスを保証することは、人権上の義務であるだけでなく、ハンセン病回復者とその家族に対する差別を撤廃するための必要条件でもあると語りました。

世界で最もハンセン病の新規患者数が多いインドのWHO国代表のロデリコ・オフリン博士は、2023年からの同国のハンセン病対策5か年計画において、ハンセン病への差別撤廃と人権擁護を優先事項に掲げるとともに、現在も90近く残るハンセン病当事者への差別法の廃止とメンタルヘルス問題への取り組みの必要性を強調しました。

また、世界第5位の患者数を持つバングラデシュのWHO国代表のバーダン・ユング・ラナ博士は、2019年と2023年のハンセン病全国会議(笹川ハンセン病イニシアチブが共催)において、シェイク・ハシナ首相がバングラデシュから2030年までにハンセン病をゼロにすることを宣言したことに言及し、目標達成に向けて、政府や民間パートナーと協力する姿勢を示しました。

テドロス事務局長と笹川陽平大使の対談では、笹川大使がWHOと笹川ハンセン病イニシアチブがこれまで50年に亘りハンセン病対策活動を共に行ってきたことについて、50年も続く活動は珍しいことだが、この長い協力関係の結果を出さなければならないと述べると、テドロス事務局長は、ハンセン病ゼロに向けて行うべきことはWHOの世界ハンセン病戦略2021-2030に明記しており、これを各国が実施することをWHOは全力で支援すると誓いました。人を中心に据えたアプローチを通じてコミュニティの協力を促進し、偏見と差別を排除することで、早期の診断・治療を可能とし、障害を予防できることを強調しました。笹川大使はグローバル・アピール終了後タンザニアに向かい、「Don’t Forget Leprosy」キャンペーンのために、2月7日からキリマンジャロ登頂に挑戦するとのことです。

笹川ハンセン病イニシアチブについて
笹川ハンセン病イニシアチブは、笹川陽平WHOハンセン病制圧大使と笹川保健財団および日本財団がハンセン病のない世界の実現を目指す戦略的アライアンスです。笹川大使および大使が会長を務める日本財団(1962年設立)と、ハンセン病対策に特化した財団として設立された笹川保健財団(1974年設立)は、50年近くにわたり世界各地でハンセン病対策に取り組んでいます。「医療面」では、1975年以降、WHOを通じて世界各国政府によるハンセン病対策を支援しており、その累計は約2億ドルにのぼります。また、「社会面」については、日本政府などと連携し、国連総会における「ハンセン病患者・回復者・その家族らに対する差別撤廃決議」の採択(2010年)や、国連人権理事会を通じた国連ハンセン病差別撤廃特別報告者の設置(2017年)に大きく貢献しています。

ハンセン病について
ハンセン病は、らい菌が主に皮膚や神経を侵す慢性の感染症で、年間20万人程度の新規患者数が毎年報告されています。治療法が確立された現代では薬を服用すれば治る病気ですが、治療の開始が遅れたり、中断したりすると、抹消神経が障害を受け、手足・顔面の知覚麻痺や筋力低下などの身体的な障害につながることがあります。推定300万~400万人がハンセン病によって何らかの障害を持ちながら生活しているとみられています。また、ハンセン病は治る病気にも関わらず、多くの回復者およびその家族が、社会の根強い偏見や差別に今なお苦しんでおり、教育や雇用、社会参加の機会が制限されるなどの問題が残っています。