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COVID-19ハンセン病コミュニティ支援 in ネパール

コロナ禍のネパールハンセン病コミュニティ

新型コロナウイルスの感染拡大によって世界各地では都市封鎖や厳しい移動制限が取られてきました。ネパールでは今年3月から6月中旬まで全国規模の都市封鎖が行われ、市民生活が混乱しました。中でもハンセン病回復者は差別や偏見に加えて、日雇い労働で生計を立てているなど経済的に脆弱であることから、都市封鎖は当面の食料に困窮するほど彼らの生活に甚大な影響を及ぼしました。ネパールの累計(2020年8月2日時点)の新型コロナウイルス感染者数は20,750人、死者は57人と人口(約2,900万人)比でそれほど多くはありませんが、世界で3番目に感染者の多いインドからの越境を完全に制限できていないことを考えると、状況はますます深刻になることが予想されます。

笹川保健財団は新型コロナウイルスの影響で困窮するハンセン病当事者コミュティを支援することを目的として、緊急支援物資の供給、政府・関係者への働きかけ(アドボカシー活動)、積極的な情報発信から成る包括的なプロジェクトを展開するべく、今年6月からネパール、インドネシア、インドで支援事業を開始しました。(財団のハンセン病コミュニティへの新型コロナ対策支援についてはこちらをご覧ください)

ネパールでのプロジェクト実施団体

112の自助グループ(SHG:セルフヘルプグループ)を支えるNepal Leprosy Trustはインドと国境を接するタライ地域でハンセン病基幹病院を運営しており、ハンセン病対策活動や回復者の社会的・経済的な自立支援活動を1977年から行ってきました。112の自助グループのうち、4つの大きなグループがNGOとして登録されています。グループの約7割はハンセン病回復者で、他に障がい者やリンパ系フィラリア症の回復者が参加しています。本事業においてSHGメンバーは単なる受益者ではなく、立案、動員、実行など主体的な役割を担っています。

プロジェクトの状況

これまで行政へのアドボカシー活動としてラリー(行進)を数回実施し、嘆願書を手渡して回復者への緊急支援物資の提供や無料の医療保険制度の実施などを訴えてきました。ラリーは一人ひとりが十分な距離を保ち、またメッセージを掲げて静かに行進するなど、感染対策に十分に配慮しながら行われました。

またSHGメンバーに米、豆、食料油などの食料品や石鹸、マスクなどの衛生用品を配給しました。活動地の区長のひとりはNLTの活動に大変感謝し、他の地域にも支援をして欲しいと5,000ネパールルピー(5,000円相当)を寄付したとの報告を受けています。現在、ネパールは雨期で、活動地のタライ地域は度々洪水に見舞われます。そのため道路が冠水したり泥でぬかるんだりして、物資の運搬が困難になることもありますが、活動は中断されることなく、これまで974人のSHGメンバーやその家族が食料や衛生用品を受け取りました。

情報発信活動としては、ラジオジングル(ラジオ番組の節目に挿入される短い音楽や告知など)をネパール語とマイティリ語(現地の言葉)で1日に32回ほど流し、新型コロナウイルスの感染予防に関する正しい知識の普及を行っています。さらに、プロジェクトスタッフは電話を通じSHGメンバーの健康や生活の状況を確認するなど、きめ細かい対応を行っています。

新型コロナウイルスの影響で生活を脅かされているハンセン病当事者にとって、緊急支援は「命綱」といえるほど重要です。また当事者自らが行政に働きかけ、自らの権利を主張し、正しい情報を広く普及する活動を行うことで、当事者組織の運営能力の向上が期待できます。最終的には行政による支援策を実現し、さらに積極的な情報発信によって活動資金を調達することができれば、本事業が終了した後でも支援活動を続けることが可能となります。笹川保健財団は定期的に支援団体と情報を共有し、事業が完了した後の持続可能性を見据えながら、本事業をサポートしています。

Nepal Leprosy Trustのfacebookでは、日々の活動をご覧いただけます。