インドネシアのハンセン病患者・回復者やその家族の人権侵害についての調査

ハンセン病は差別を伴う疾患で、罹患すると生活のあらゆる面に影響を及ぼします。病気が治った後も社会から疎外され、差別を受け続けることがあります。ハンセン病患者・回復者やその家族が、偏見や差別などの、自らの体験を社会に訴えようとしても、人権侵害を証明するための知識や力がないため、受け入れられないことがあります。

笹川保健財団の支援により、PerMaTaとYDTIは、ハンセン病回復者と当事者団体が人権侵害を受けた時に解決に向けた行動を起こせるようにすることを目的としたパイロット・プロジェクトを実施しました。PerMaTaのメンバーから6名のハンセン病回復者が選出され、現地チームを結成。ワークショップやアンケートを実施し、人権侵害の可能性がある事例を洗い出した後、5つの事例をについてさらに調査を行いました。

これら5つの事例は、「ハンセン病を理由に生徒が退学になった」「ハンセン病を理由に近所の人が公共の井戸の使用を禁止した」など、人権侵害の疑いのある内容となりました。チームは10日間、1つの事例に2～3日かけて地域の情報を集め、その後ワークショップで調査結果を分析し、結論を出し、次のステップを検討しました。

どの事例をとっても、実際には、明確な法律違反の立証は困難でした。例えば、「ハンセン病で退学になった生徒」の事例では、その生徒はまだ学生として登録されており、退学処分は正式なものではないことがわかりました。報告書では次のように述べられています。 「今回の事例の多くは、明確な法律違反ではなく、曖昧な部分が多く、多くの側面があることが分かりました。5つの事例では、常に関係者のハンセン病への知識のなさと偏見が問題を引き起こしていました。裁判を起こすのではなく、現場で問題を解決するための啓発と支援が必要だったのです。」

このプロジェクトは、ハンセン病回復者が適切な研修を受けることで、人権侵害の可能性がある事例を調査するに相応しいことを実証しました。また、このプロジェクトで得られた経験や知見をもとに、英語とインドネシア語でガイドラインが作成されました。他の団体による調査活動の指針・目標として活用されることが期待されます。