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看護フェロー初のフィールド視察研修

Sasakawa看護フェローとして現在認定されている21名の多くは普段、首都圏など都心部で、看護師、保健師として働いていたり、大学・研究機関で研究をしている若い看護職たちです。そんなフェローたちを対象に、留学前国内活動の一環としてフィールド視察研修を実施しました。この研修は、日本各地が直面する保健医療・看護・福祉分野その他さまざまな社会問題を実感するとともに、地域の歴史や伝統の片鱗にも触れて欲しいとの願いもあり企画したものです。留学前の紅葉も深まった11月、初めての宿泊研修の舞台として福島県を訪れました。

紅葉深まる福島の景色
移動中も会長・喜多による講義の時間

2022年11月10日、フェロー7人と向かったのは飯舘村です。飯舘村は、2011年の原発事故で放射能災害の被災地となり、全村非難を余儀なくされた土地です。訪問先に飯舘村を選んだのは、財団会長の喜多と国際保健分野で旧知の仲であり、「国際保健協力市民の会(SHARE)」代表を務める本田徹医師が、村唯一のクリニックで診療をされていたことがきっかけでした。「いいたてクリニック」での週2回の診療のほか、精力的に訪問診療を行う本田先生と訪ねた村役場では、杉岡誠村長と保健師の皆さんから、村の現状、事故後の様子、復興の過程などのお話を伺いました。

飯舘村役場で杉岡村長と
本田先生からいいたてクリニックのご説明

その日の夜はログハウス「風と土の家」に宿泊。「風と土の家」は、仮設住宅や廃校となった学校の備品等を再利用し、村民と村外の人々の交流の場として作られた宿泊施設です。フェローたち全員で食事の準備をし、囲炉裏を囲みながら、講師の方々をお招きし、夜遅くまで意見交換をしました。

本田先生と星野看護師(右)
囲炉裏を囲んでの意見交換
「ふくしま再生の会」田尾理事

お話を伺ったのは、村で訪問看護を行う星野勝矢看護師(訪問看護ステーション「あがべこ」代表)と、原発事故からの復興と村の生活の再生を目指すNPO法人「ふくしま再生の会」代表の田尾陽一理事。翌日はそれぞれの活動現場である利用者さん宅や、地域活動の場である「図図倉庫」などを見学させていただきました。

訪問看護利用者さんとの交流
村内の語りべ、菅野榮子さんと
地域おこしの場として期待される図図倉庫

飯舘村を後にし、福島市に戻ってからは日本財団在宅看護ネットワークの「結の学校」を訪問。起業家育成事業1期生の沼崎美津子所長から、訪問看護と看護小規模多機能型居宅介護(看多機)運営について講義をしていただき、2日間の盛りだくさんな研修を終えました。

医療的ケア児も受け入れる「結の学校」
沼崎所長と

以下、研修後フェローたちから寄せられた感想をご紹介します。

本田先生の訪問診療を拝見して、現在大学で医療コミュニケーションを学んでいる私は「まさしくこれこそが理想の医療コミュニケーションだ!」と感じました。机上の勉強では得られない貴重な経験となり、今後の自身の”人”とのコミュニケーションを再考していきたいと思います。

(物理学者として除染作業から地域の活動に入られた田尾さんは、)ご自身の専門性を持って、課題の科学的な解決を目指し活動されていることが素晴らしいと感銘を受けました。

菅野榮子さんの「当時は原発のことを知らなかったけど、今は勉強している。」という言葉と、田尾親子の「知らずに怖がるのと知って怖がるのは違う。」という言葉が印象に残っている。知らないことをそのままにするのではなく、自分事に捉えて知ろうとしている方々の言葉は心に響いた。Sasakawa看護フェローになって、日本や世界の行く末について考える機会が増えたが、私はまだどこか他人事にしてしまっていたと反省した。問題と正面から向き合い、できることを行動に移している方々と出会って、私も行動で示すことができる人間でありたいと強く思った。

看護と介護がお互いの手が行き届かないところを補い合う「結の学校」の取り組みに感動しました。医療者として必要なケアは提供しながらも、本人と家族の力を引き出しているスタッフの皆さんに多くの刺激をもらいました。

食事中やバスの中での喜多先生のお話が印象的だった。(たとえそれが自分の専門外であっても)今この地域にどんな問題があるのか、自分はこの問題にどう関与し貢献できるかを研修の2日間で常に頭で考え、議論したことで、知的作業による良い疲労感を覚えた。

今回の研修でフェロー同士お互いの大学院の出願状況や人生観について話す機会を得られました。みな着々と準備を進めている裏で色々な困難や思いを抱えていることが分かりましたし、自分だけではないという一体感も得られました。何か分からないことや悩んだ際は頼れる心強い味方を得られた気がしました。

なお、今回の訪問の模様は当日の県内ニュースでも紹介されました。

今後もSasakawa看護フェローの活動にご期待ください。