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緩和ケアを考える 公開講座レポート

2024年明けてすぐに始まった全2回の「在宅看護と緩和ケア」公開講座。講師を務めていただいた川越厚先生(在宅ホスピス研究所パリアン森の診療所代表)にはたっぷりと計3時間のご講義をいただきました。盛りだくさんの講座をレポートします。

緩和ケアとは何か

初日、1月18日の講義は「ホスピスケアの理念と歴史」について。

川越先生が、50年以上の医師としてのキャリアの多くを捧げてこられた「在宅緩和ケア」「ホスピスケア」について、その理念と歴史を丁寧に説明してくださいました。

講師を務めた在宅緩和ケア医の川越先生

「ホスピスケア」が、「死」を前にして苦しむ者に対する「全人的なケア」であるのに対し、「緩和ケア」とは、生命の危機に直面する患者とその家族に対し、両者のQOL(生活の質)を改善する取り組みであり、その疾患がもたらすあらゆる苦痛(身体的な痛みのほか心理的、社会的、スピリチュアルな問題)を予防し、緩和することによって達成されるもの、と川越先生は定義します。

                    講義資料より

先生ご自身の取り組みの経験を、「あるがままのいのち」を大切に生きようとした患者、家族との数々の対話などを紹介しながら進むお話に、視聴者たちは質問するのも忘れ、聞き入っているようでした。

緩和ケアにおける看護師の役割とは

2日目の1月25日は「ホスピスケアの理念を実現する医療、介護支援」をテーマとした、より実践に基づいた、しかし長いご経験ある専門医ならではの深い洞察を交えた「鎮静」と「鎮痛(除痛)」の違いの解説には、一段と参加者の関心が高まっていました。また、先生には「在宅看護と緩和ケア」という講座全体のテーマにそって、看護師の役割についても語っていただきました。

在宅の場合、緩和ケアはチームアプローチであり、従来の病院型のようにトップの指示に従って各専門職が動く形ではなく、医師、看護、介護それぞれの専門家が、互いの専門性を尊重しながらチームで動くことが重要です。

病院型のチームアプローチ
在宅で実践されるアプローチ
海外では互いの専門性を超えることも

この際、川越先生から看護師の役割について問題提起がありました。かつて、上記チームの統合性をとるのは看護師の役割でした。しかし、現在の在宅緩和ケアの実態としては、患者や家族の一番近くにいるのはケアマネジャーなど介護職であるため、本人からの相談が直接そちらに行ってしまい、介護職がチームの中心にいることが多い。このことについて、看護師は危機意識を持たなければならないのではないか。チームの専門職のひとつではなく、看護師だからできること、看護師にしかできないことは何ですか、と先生から、穏やかな口調ながらも厳しい問いかけがありました。

講義の最後に、司会を務めた当財団会長の喜多が質問を紹介する形で、オンライン参加者からの質問にも応えていただきました。

川越先生の、看護師の役割に関する問題提起に対して喜多は、在宅緩和ケアにおける看護師の役割として、死への恐怖を取り除くための説明をすることの重要性を指摘。ただし現行の制度では、その説明行為は収入につながらないため、限られた在宅看護の時間の中でそのような重要な仕事に時間を割けない難しさと、持続可能な在宅看護のための制度をどう確立するかという課題について言及しました。

参加した看護師たちからは、「自分が携わる緩和ケアは本当にこれでいいのか立ち止まって考えたい」「看護師としてやらなければならないことは何なのか考えさせられた」といった声が寄せられました。

本講座に関する会長ブログはこちら。