JP / EN

News 新着情報

日常を支えながら命を守る―看多機「結の学校」の1日に密着【後編】

「結の学校」で働くスタッフの1日を追う。それぞれのやりがいとは?

取材:ささへるジャーナル編集部

福島県福島市にある看護小規模多機能型居宅介護事業所「結の学校」で活躍する職員の姿を全3回にわたってお届けします。

第3回は、「結の学校」一日密着の【後編】です。

第2回の前編(別タブで開く)では、朝礼から利用者の迎え入れ、排便・入浴ケア、医師との連携で取り組む訪問看護などの様子までをお届けしました。

午後も利用者の見守りや食事・おやつの介助、送り出し、1日の出来事を共有する夕方のカンファレンスまで業務は途切れることがありません。所長の沼崎さんを中心に多職種が連携し、利用者とその家族に寄り添うリアルな現場の様子を追いかけます。

11:30 昼食の配膳・食事介助

食事は、管理栄養士が毎日の献立を作成し、調理されたものが提供されます。やわらかさの違いやアレルギー対応食など、個々に合わせた食形態です。

利用者にとって食事の時間は、1日の中でも楽しみなひととき。車いすで移動できる人は居間に集まり、職員と会話を楽んだり、介助を受けながら食事をとります。

食事の時間中、午前中はついていたテレビが消されていました。気になって傍にいたスタッフに理由を聞くと、「普段はつけているが、今日はテレビに気を取られて食事が進まない利用者がいるので消した」とのこと。

「結の学校」には日によってさまざまな症状の利用者が訪れます。その日の利用者の状態に合わせて整える環境づくり。誰一人見逃さない細やかなケアを感じたひと場面でした。

食事を終えたら、居間の横にある洗面所で歯磨きタイム。食後の口腔ケアも日課としてきちんと習慣づけられています。

利用者さんの食事をサポートする介護士
食欲がないという利用者さんに、体調を優しくヒアリングする介護士

12:00 職員室にてミーティング

職員全員が集まり、朝からの情報共有と午後のスケジュールを発表し合います。利用者家族からの問い合わせや、行き場のない利用者さんの受け入れ要請など、次々と連絡が入ってきているようです。

職員室の隣にあるカルテ庫を見せてもらいました。全てが電子カルテに移行しているわけではなく、紙での管理も必須。1年ごとに色分けされたファイルがボックスに整然と並び、ラベルも丁寧に貼られています。一目で取り出せるよう、視認性を重視した管理が徹底されていました。

訪問看護先の利用者の状況を共有する看護師たち
利用者の情報をまとめたファイルが見やすく管理されたカルテ庫

12:30 昼休憩

利用者が昼食を終える頃に、スタッフはそれぞれの動きに入ります。個々でスケジュールが異なるため、昼休憩は空いた時間に順番に取るそうです。福祉避難所に登録しているコミュニティルームは、スタッフの束の間の休憩場所。横になって体を休める人の姿も見られます。

休憩に入ってきた看護師の渡邉(わたなべ)さんは、このあと訪問看護へ向かうとのこと。

渡邉さん「13:30に訪問なので、その10分前には出発です。一息いれて、午後も頑張ります!」

コミュニティスペースで束の間の休息を取るスタッフたち
午後に予定している訪問看護に向けて気合を入れる看護師の渡邉さん

14:30 おやつの時間

この日のおやつはバニラヨーグルト。利用者は職員と談笑したり、趣味の塗り絵を見せてくれたりと、居間は笑い声で賑やかです。

浴室の奥にある洗濯室では、介護士の比金(ひきん)さんが洗濯機を回していました。洗濯機には利用者のシールを貼り、誰の洗濯物か分かるようになっています。

比金さん「失禁があった利用者さんがいたため、急きょ洗濯しています。また、ご家族が忙しくて家で洗濯できないときも、うちで洗濯対応することもあります」

「結の学校」に入職して1年という比金さん、だいぶ仕事にも慣れてきたそう。現在は唯一の男性介護員として頼りにされています。

塗り絵を楽しむ利用者
洗濯物をたたみながら利用者とコミュニケーションを交わす介護士の比金さん(右)

15:00 利用者の送り出し

午前中に迎え入れた尾形依千花(おがた・いちか)ちゃんのお母さんが迎えに来ました。到着すると、職員がどのように過ごしていたか様子を伝えます。

この日も依千花ちゃんはリハビリマッサージを頑張りました。病状の進行や体重の変化、次回の利用日などを確認したあと、看護師に抱きかかえられてお母さんの車へと向かいます。

スタッフの皆さん「依千花ちゃんまたね~」

依千花ちゃんを迎えに来たお母さん(右)
依千花ちゃんを見送る看護師の三嶽(みたけ)さん

15:30 利用者の送り出し

夕方が近づくにつれ、迎えに来る家族の姿が増えてきました。先ほど職員に塗り絵を見せていた利用者の永田(ながた)さん家族の姿もあります。

永田さん「2025年9月から利用し、今では週2回泊まり/週3日の夜は自宅で過ごしています。自宅では私一人で母を介護しているため、職員の方に介助の方法を教えてもらいながら続けています。預かってもらっている間に仕事ができるのは本当に助かります。入院中はベッドで過ごすことが多かったのですが、ここでは利用者が楽しめるイベントも多く、表情が明るくなりましたね」

利用者の佐藤(さとう)さんの自宅は、「結の学校」のすぐ裏手にあります。この一帯の地主で、事業所の設立当初から利用者として関わってきたそうです。車いすに乗り、歌を口ずさみながらご機嫌な様子で帰宅する佐藤さんをスタッフ一同で見送りました。

佐藤さん「週3回利用し、その他は訪問介護とリハビリをお願いしています。自宅から近いので、困ったときはすぐに相談できるのが心強いです。何もなくても『大丈夫ですか』と声を掛けてもらえ、一緒に介護してくれているような気持ちになれて、本当にありがたい存在ですね」

利用者家族にとっての「結の学校」の存在について語る永田さん
利用者の佐藤さん(左から2人目)を自宅まで送り届ける「結の学校」の介護士(右から2人目)と所長の沼崎さん(右端)

17:00 職員室にて夕方のカンファレンス

1日の出来事、気になったことをスタッフ全員で共有します。この日のカンファレンスで特に時間をかけて話し合われていたのは、認知症が進行している利用者と、その家族への対応についてでした。

利用者は症状が進んでおり、便失禁で汚れた衣類を自らごみ箱に捨て、それを覚えていなかったといいます。自宅で介護を続けている家族の負担が大きくなっているため、入院という選択肢も提案したものの、家族は「できる限り自宅で看たい」と希望されている状況です。

一方で、訪問介護に入った際に薬が残っており、服薬が十分にできていない可能性も見られました。こうした状態でも家族から何も相談がないことに、職員は対応の難しさを感じている様子です。

利用者が症状や服薬で困っているとき、「こういう方法もあります」と提案しても、本人や家族がすぐには受け入れられないこともあります。相手の気持ちに寄り添いながら対話を重ね、その人となりを理解したうえで、時間をかけて提案していくしかない――。現場の難しさを感じさせるエピソードでした。

カンファレンス後、日勤の職員はイベント報告書の作成や申し送りを行い、夜勤担当者に引き継ぎます。

現在(2026年3月時点)、「結の学校」には23名ほどの利用者が登録しています。通いは1日18名まで、泊まりは9名まで受け入れ可能です。月単位でおおまかな予定を組んでいるものの、利用者の状態は日々変わるため、急きょ宿泊対応になることも少なくありません。

それでもスタッフたちは一人一人の状況に向き合いながら、できることを誠実に積み重ねています。

地域の安心を見守る拠点として、「結の学校」は明日も元気に開校します。

スタッフが今日1日の出来事や問題を共有するカンファレンスの様子
スタッフから受けた報告に対しアドバイスをする所長の沼崎さん

「結の学校」を支える職員たちの声

ここからは、「結の学校」で働くスタッフに、自身の仕事内容ややりがいについてお話を伺いました。看護や介護に対するそれぞれの想いを抱えながら、日々利用者やその家族の“自分らしい暮らし”に寄り添っています。

吉田強志(よしだ・つよし)さん/看護師

私は2025年度の「日本財団在宅看護センター」起業家育成研修(別タブで開く)に参加したのですが、その前は「結の学校」で働いていました。研修を終え、今年7月に起業するまで再びここで勤務しています。

訪問看護は1日4件ほど。医療機関の指示書をもとに単独で訪問し、体調確認や排便ケア、清拭、必要に応じて痰の吸引などを行います。

起業家育成研修では、看護師として地域を支える視点を学びました。その経験から、今は地域医療との連携や住民との関係性など、社会的な側面にも目を向けながらケアに入ることを意識しています。

7月には福島県大玉村に訪問看護の事業所を開設する予定です。子育て世帯が増えている地域でもあるため、小児の訪問看護を中心に取り組み、一人でも多くの医療ケア児を支えられるよう頑張りたいと思っています。

関連記事:学び、つながり、起業する「日本財団在宅看護センター起業家育成研修」。受講者が目指す看護の在り方とは?(別タブで開く)

看護師の吉田強志さんは、「日本財団在宅看護センター」起業家育成研修10期生の2025年度受講者でもある

筒井美智子(つつい・みちこ)さん/事務員

もともと病院で医療事務として働いており、「結の学校」創業時からここで勤務しています。事務の仕事は大まかに決まっていて、月初は請求業務、中旬は利用者への請求書や領収書の配布、主治医への計画書・報告書の送付など。月末は職員の勤怠管理が中心です。

書類のミスを出したくないので、時間がかかっても確実に仕上げるよう心掛けています。それをできるのが、自分の強みだという自負もあります。

身内をここで看取ってもらったこともあり、「結の学校」は自分にとって第2の家のような存在。とても楽しく仕事をしています。いずれは介護福祉士になるのが目標なので、いま介護職員初任者研修を受講しているところです。

現在介護士の資格取得を目指している事務員の筒井美智子さん

手塚香織(てづか・かおり)さん/介護福祉士

「結の学校」創業時からのメンバーです。当時は子どもが小さかったのでパート勤務から始め、介護福祉士を取得したのは少し遅かったですね。

排泄・入浴・食事の介助が主な仕事ですが、この仕事はとにかく体力勝負。マットレスを運んだり、車いすをスロープに上げたりと、本当に大変。また、朝は職員が一斉に訪問看護や送迎に出てしまうと、一人で利用者の迎え入れを行い、全員のバイタルサインを測定して体調の変化を確認しなければなりません。

体力的にいつまで続けられるか分かりませんが、それでも職員同士で声を掛け合いながら、毎日全力で向き合っています。利用者さんに寄り添いたい、一人ぼっちにはさせたくないという気持ちは、みんな同じですから。

設立当初から「結の学校」に勤める介護福祉士の手塚香織さん

前田美奈子(まえだ・みなこ)さん/看護師

病院で看護師として20年働いてきました。急性期の現場で忙しく働くことにやりがいを感じ、仕事も楽しかったんです。

けれど「結の学校」で働くようになり、患者さんにとって人生は退院してからも続いていくのだと強く感じるようになりました。病院は治療を完結させるのが目標でしたが、今ではその後の生活こそが、その人の人生だと思っています。

以前から「退院して大丈夫だろうか」と思うことはありましたが、ここで働くようになって、家族の悩みや本人の不安など、これまで見えていなかった声が聞こえるようになりました。少しでもその人たちの力になりたいと思っています。

病院よりも職員同士の距離が近く、介護士やリハビリスタッフなど職種に関係なく同じ目線で関わるため、日々学ぶことが多いです。強い信頼関係が築けていると思いますね。

以前は病院勤務していた看護師の前田美奈子さん

小山藍(おやま・あい)さん/看護師/管理者 副主任

看多機と訪問看護の両方の管理者という立場で、現場全体を見守っています。

勤務表の作成や、新規利用者に対してどのようなケアを行うかを組み立てるなど、全体のマネジメントが主な業務です。一方で、利用者さんが住み慣れた自宅で安心して生活を続けられるよう、私たちがどう関わるべきかを考え、全力で支えていくことが役目だと思っています。

この仕事で何より大切なのはコミュニケーションです。ご家族は病院でも「結の学校」でも、そこにいる間の様子を全て見ることはできません。だからこそ私たちが事業所での様子を伝えたり、ご自宅での状況を聞いたりしながら情報を共有し、一緒にケアをしているという気持ちを醸成していくのが大切。それが信頼関係につながっていくのだと思います。

また、この仕事は多くの職種との連携が欠かせません。介護職員は利用者さんをよく観ていて、小さな変化も丁寧に報告してくれますし、ヘルパーや薬剤師など外部のスタッフともフラットな関係が構築できています。

まだ十分とは言えませんが、少しずつ連携の輪が広がっていけば、福島の地域包括ケアも変わっていくのではないでしょうか。

所長の沼崎さんの右腕として「結の学校」を引っ張る管理者の小山藍さん

編集後記

3回にわたり、福島市「結の学校」で働く皆さんと、そこへ集う方々の姿を追いました。

取材を通して見えてきたのは、介護保険の枠組みを超え、地域の人々の“いつもの暮らし”を死守しようとするプロたちの執念です。「通い・泊まり・訪問看護・訪問介護」の4つを柔軟に組み合わせる看多機の仕組みは、利用者にとっては「24時間の安心」ですが、支える側にとっては、目まぐるしく変わる状況への対応力と、職種を超えた緻密な情報共有を求められる、柔軟かつ多忙を極める現場でもあります。

しかし、そこで働く皆さんの言葉に悲壮感はありません。「退院した後の生活こそが、その人の人生」という看護師さんの言葉や、家族と一緒に悩み続ける姿勢に、在宅看護・介護の真髄を見た気がします。

「結の学校だから安心できる」。

利用者の皆さんが異口同音に語ったこの言葉こそが、これからの多死社会・人生100年時代における地域の「灯台」のような役割を示しているのではないでしょうか。

撮影:十河英三郎

日常を支えながら命を守る―「結の学校」所長に聞く、暮らしと医療を両立させる「看多機」とは

日常を支えながら命を守る——看多機「結の学校」の1日に密着【前編】

ささへるジャーナル記事一覧