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COVID-19 ハンセン病コミュニティ支援 in インドネシア Part 3 新たな出会い

2020年5月から8月にかけて、インドネシア南スラウェシ州の5県において、新型コロナウイルスの感染拡大により深刻な影響を受けているハンセン病患者、回復者とその家族を支援するCOVID-19ハンセン病コミュニティ支援事業が実施されました。ハンセン病当事者団体ペルマタ(PerMaTa)南スラウェシのリーダーたちが支援のため保健所から入手した名簿をもとに行った戸別訪問は、人々が直面する様々な困難を浮き彫りにしました。

経済的な困窮

新型コロナウイルスによる経済活動への影響は、多くのハンセン病患者・回復者とその家族の生活を一変させました。仕事を失い、生計手段を絶たれた上、身分証明書を持っていない等の理由から、政府の支援を受けられずにいる人々がいることも分かりました。ペルマタ南スラウェシの県のリーダーたちは、米や卵などといった当面の生活を支える食料を届けるだけでなく、政府の支援が継続的に受けられるように、身分証明書の発行手続きを代行したり、公的な支援リストに追加してもらえるよう県や村に要請を行いました。

ハンセン病患者、回復者とその家族に対する偏見・差別

ハンセン病に対する誤った情報や誤解から、偏見や差別を受け、困難な状況にある人々との出会いもありました。ハンセン病の感染力は弱く、ほとんどの人はもともと備わった免疫力により感染に至りません。そのためハンセン病は、“最も感染力の弱い感染病”とも言われていますが、ある家庭では、感染を恐れ、夫がハンセン病治療中の妻を隔離していました。薬による治療を開始したら感染はしないということを伝えると、夫は歓び安堵した様子で、妻の治療が完治するまでサポートすることを約束してくれました。
また、ハンセン病によって指が変形した児童は、病気が感染るからと学校側から登校を拒否されていました。登校するためにはハンセン病が完治したという証明書の提出を求める学校もありました。家族の多くはどのように対応していいかわからず、子供たちは学校に行けないままになっていました。リーダーたちは学校に申し入れを行ったり、また行政に相談するなどして子供たちは再び元気に学校に通うことができるようになりました。

セルフスティグマ

家族や地域など周りから受ける偏見・差別だけでなく、ハンセン病当事者が自らに対して向ける偏見(セルフスティグマ)も大きな問題です。ハンセン病に罹患したことで自分の人生に絶望し、他人と会うことを拒み、長い間引きこもってしまうケースも少なくありません。ある村では、家から出ることができなくなってしまった兄弟の家を訪れましたが、結局会うことができませんでした。セルフスティグマを減らしていくには時間を要します。それだけに、同じ病気を経験した当事者団体のメンバーの果たす役割は大きく、これまでも多くの人々が彼らの支援により自信と希望を取り戻し、社会生活に戻ることができました。今後、この兄弟の住む村と協力しながら、解決の糸口を探っていく予定です。

医療へのアクセス

ハンセン病の治療薬は無償で提供されていますが、地域の保健センターのスタッフの理解不足から、治療薬がもらえず治療を続けられなくなった患者がいました。そのため、地域のハンセン病担当官に相談し、保健センターに働きかけてもらうことで治療を再開することができました。また、緊急の医療措置が必要な患者もいました。足の潰瘍(かいよう)が悪化した重症の状態で発見された男性は、当事者団体の支援によって、すぐに病院に搬送され無事手術を受けることができました。行政や保健センターとの連携がいかに重要であるかを物語る出来事でした。

新たな試み

今回の事業では新しい試みとして、クラウドファンディングによる資金調達を行いました。ハンセン病回復者の高齢のレプさんは、日常生活を支えてくれる家族もなく、今にも倒れそうな小さな小屋に一人で住んでいました。レプさんの住む家は、到来する雨季に耐えられるとは到底思えないほどもろく、リーダーたちはなんとかしてレプさんの小屋の改築し、窮状を救いたいと考えました。そのためには建築費用1,100米ドル(約12万円)が必要でした。そこで、初めてクラウドファンディングに挑戦することにしました。結果、多くの寄付者を得て見事目標額を達成し、短期間で必要な資金を調達することに成功しました。目下、新しい家の建設が進んでいます。(支援を呼びかけたクラウドファンディングのページでは、建設の様子を紹介しています

今回の事業を通じて、当事者団体のリーダーたちは、目の前の問題に丁寧に対応しつつ、様々な人や団体との連携や資金調達という新たな試みを行い、活動の幅を広げました。今回の経験を活かし、ハンセン病患者・回復者とその家族にとって、より一層心強い味方となってくれることを期待しています。

ペルマタ南スラウェシDTIのfacebookでは日々の活動の様子がご覧いただけます。

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