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COVID-19ハンセン病コミュニティ支援 in ネパール Part 4 活動を振り返って

今年1月から世界中で流行している新型コロナウイルスはネパールでも深刻な影響を及ぼしています。3月から6月まで全国規模でロックダウンが行われ、厳しい移動制限が市民生活を一層困難なものにしました。中でも経済的に脆弱なハンセン病患者や回復者の生活は厳しく、当面の食料にも事欠く人が急増しました。

現在のネパールの新型コロナウィルスの累計患者数は約12.2万人、死者数694人と隣国のインドに比べると多くはありませんが、8月以降増加傾向が続いており、改善する兆しは見られません。

笹川保健財団は新型コロナウイルスの影響で困窮する当事者コミュティを支援することを目的として、政府・関係者へのアドボカシー、緊急支援物資の支給、積極的な情報発信の包括的なプロジェクトを6月10日から9月15日まで実施しました。今回は事業全体の最終報告をお届けします。

活動地はインドと国境を接する南部のタライ地方です。ネパールのハンセン病基幹病院を経営しているNGO(Nepal Leprosy Trust)と共に、受益者でもある25のセルフヘルプグループ(SHG)が事業の計画と実行に関わりました。SHGの約7割はハンセン病回復者で、他に障害者やリンパ系フィラリア症の回復者が所属しています。

アドボカシー

プロジェクト開始のタイミングで活動地全ての地方政府を訪問し、活動の許可を得ました。これによってロックダウンでも制限なく活動し、必要な支援ができるようになりました。さらに十分な距離を取りながら感染予防のメッセージを掲げて行進するラリーが実施され、最後には役場を訪問し、ハンセン病患者、回復者やその家族に対する公共・医療サービスの提供を嘆願しました。合計10回のラリーが行われ、計280名の受益者、市民、支援者が参加しました。

この活動によって潰瘍(かいよう)などの治療が必要な回復者が救急車を使うことが認められました。ロックダウンにより公共交通機関で病院に通うことができない回復者にとって、このサービスは非常に重要でした。

さらに行政とSHGが良好な関係を築くことができ、複数の地区ではSHGが提出した生活改善の要請が受理されました。例えばシルタウリ地区では近日中にSHGメンバーが職業訓練を受けられることが決まり、マホタリ地区ではSHGメンバーは家屋を修理するための支援金(10万ネパールルピー。日本円で約10万円)を受給することとなりました。

食料支援

緊急物資として25グループの600名のメンバーとその家族に米、豆、食用油などの食料品や石鹸、マスクなどの衛生用品が支給されました。食料は家族4人が1カ月間生活できる量です。

支給活動を実施するにあたっては受益者ではない人も支援を求めて現れて現場が混乱することが懸念されましたが、行政職員の立ち合いを得られたことで、大きな混乱や奪い合いなどに至ることなく無事に終了することができました。

本活動によって受益者が飢えという最悪の事態から免れ、尊厳ある生活を保つことができました。またマホタリ地区では支援対象から外れてしまった回復者に対して、メンバーが配給された米を少しずつ分けてあげるなど、当事者間の相互扶助の精神が発揮されました。

情報発信

受益者を含む近隣住民が新型コロナウイルの正しい知識と予防法を身に着けることを目的として、ラリーやラジオジングル、無料のホットライン(電話相談)、SNSでの情報発信など、様々な活動を実施しました。特にラジオでは新型コロナウイルスの予防だけではなく、ハンセン病の初期症状や早期治療の重要性が伝えられました。ネパールではラジオを日常的に聞く人が多いため、情報が多くの人に届いたことが期待されます。

本事業はパイロット事業という位置づけから限定的な期間での実施でしたが、予想以上に大きな成果を得ることができました。生活に困窮するSHGメンバーに対して迅速に食料を支給したことで、多くの人が飢えの心配から救われただけではなく、互いに助け合い、困難な状況を一緒に乗り越えるという経験が得られました。さらにSHGメンバーが新型コロナウイルスを防ぐための正しい手の洗い方やマスクの付け方を学び、正しい知識を広く伝えることでコミュニティや行政との関係が改善しました。加えて、根気強く地方行政に要望を訴え続けた結果、一部の地区では行政に提出した生活改善の申請書が通り、回復者が貧困から抜け出す道が開けました。

Nepal Leprosy Trustのfacebookでは、日々の活動をご覧いただけます。

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